包装餅とパックごはんで業界首位のサトウ食品(新潟市)では、消費マインドの変化に対応した提案を行う。
昨年の同社売上高は、鏡餅除く包装餅が単体119億円(前期比98.8%)。市場シェアは34.3%とトップを維持したほか、連結子会社うさぎもちと合わせ51.5%と過半数。パックごはんは294億円(3.2%増)で、30.7%とトップシェアだ。
この秋はメリハリ消費や新しい使われ方に対応し、付加価値を高めた商品を投入。「サトウの切り餅」では、ひと口大の餅を個包装にした「シングルパックミニシリーズ」から既存の100gに加えて300gを9月1日に発売。小腹がすいたときや料理に手軽に使えるうえ、薄く火が通りやすいことからタイパ志向にもマッチ。麺や鍋具材、おやつでの利用を狙う。
好評のスティック餅「切り餅いっぽん」に「ヌテラ」(伊フェレロ社)のトッピングを提案するコラボ企画でも、餅の新たな食べ方を開拓。CMにはタレントの芦田愛菜さんを引き続き起用し、おいしさを保つ独自包材「ながモチフィルム」をアピール。YouTubeでも人気クリエイターを起用したレシピ紹介などを行う計画だ。アニメ「SPY×FAMILY」とのコラボ企画が昨年に好評だったことから、今回は「シングルパックミニ300g」と「サッと鏡餅」シリーズでコラボ商品が登場する。
コロナ禍を経て利用価値が見直されるパックごはん。トップブランド「サトウのごはん」は、まとめ買い増加から5食以上の多食パックの販売比率が拡大。3食のみだった「北海道産ゆめぴりか」「山形県産つや姫」に5食を追加し、多食パックでも高まるおいしさへのこだわりに対応した。
パックごはんは7月1日から、餅も9月1日から価格改定。15年ぶりに値上げする包装餅は、売価700円前後の「サトウの切り餅」(1kg)で100円程度の店頭価格上昇を想定する。
鏡餅業界では今年から、受注締日を10月31日に設定。流通からの受注を締め切ることで生産計画を立てやすくし、フードロスを削減する。従来各社とも鏡餅商戦の大詰めである年末まで追加注文に対応していたが、近年の人手不足からそれも困難になってきた。
佐藤元社長によれば「(年末は)もう作る人がいないのが現状で、運ぶトラックも確保できないということがかなりの確率で起きてくる。今までと同じようには進められず、物流、人員問題についてご理解いただきながら取り組んでいるところだ」(8月23日の発表会で)と説明した。
パックごはんは、近年の需要拡大に対応して生産体制を増強。聖籠ファクトリー(新潟県聖籠町)に増設した新ラインが来年2月に稼働する予定だ。
「震災以降、予想していなかった(コロナ禍の)3年あまりを経て、各社はパックごはんの増産体制を敷いた。新しいプレーヤーも入ってきて、需要の受け皿はかなり大きくなったという手ごたえを感じている」(佐藤氏)といい、市場拡大へトップメーカーの意気込みをにじませた。