三菱食品の京谷裕社長は2期連続で最高益を更新した前期決算を振り返り、「中経2023の各種施策が着実に成果に結びつき、岩盤収益として経常250億円を稼げる実力がついてきた」と語った。今期見通しでは、消費者の節約志向の強まりや、電気代・物流費・人件費の高騰など厳しい経営環境は続くが、「中経2023の最終年度として収益性向上の施策を引き続き徹底することで、3期連続の最高益更新は十分可能」とした。
同社の前3月期連結決算は売上高1兆9千968億円(2.1%増)、経常利益251億円(23.7%増)の増収増益で着地。コロナ禍で落ち込んだ業務用やCVSの回復に加え、利益面では電気代や物流費、人件費増加など約10億円のコスト負担増があったものの、収益管理徹底や業務効率化の取り組みでカバー。
各段階利益は2期連続で過去最高益を更新し、ROEは前期比2.1P改善の9.7%まで上昇。「中経2023」で掲げた最終23年度の定量目標(経常利益220億円、ROE8%)を1年前倒しで達成した。
京谷社長は「過去に例を見ない値上げラッシュの対応に多くの労力を強いられたが、環境変化の波を逃すことなく各種施策によって筋肉質な体質に進化してきた」と手応えを示した。その上で「一定の収益基盤は確立できたが、ここからさらに利益水準を高めていくためには、新たな事業領域へのチャレンジが不可欠」と強調。中経2023の総仕上げである今期は「将来のあり姿を見据えた準備の年と位置付け、成長戦略として次世代流通業への進化を加速させる」方針を示した。
2030年度の目指す姿として経常利益300~350億円を想定、事業ポートフォリオの多様化を進める。現状のリテールサポート、メーカーサポート、商品開発の3本柱に加え、データ・デジタルマーケティング、海外事業、物流事業を成長分野と位置付け、積極的な投資・人員シフトを進める構えだ。
「データ・デジタルマーケティング」では、出荷・購買データや位置情報などを活用し、卸ならではの新たな需要創出型モデルの創出を目指す。生活者の多様な価値観を捉え、潜在需要を掘り起こすための店内・店外でのデジタル施策や、販促プロモーションを推進。人口減少・需要縮小が予想される中で、メーカー・小売店とのパートナーシップによる需要創造の取り組みを強化する。
「商品開発」では輸入総代理店機能の拡充のほか、からだシフトなどオリジナルブランドの拡大、地域産品などのブランディングや日本食分野の輸出拡大に向けた取り組みを推進する。そのほか、海外事業の拡大や持続可能な食のサプライチェーン構築に向けた物流事業の取り組みも進化させる。
これらの取り組み内容は、7月26日から開催予定の「ダイヤモンドフェア2023」でも紹介する予定。京谷社長は「国内は人口減少が加速度的に進むことが予想されるが、新たな時代に向けた価値ある機能を提供し、皆さまから信頼される企業を目指していく」と意気込みを語った。