食を通じて社会貢献を 向き合いたい食と健康 キユーピー 髙宮満社長

「営業や生産の業務経験がないのが特徴。営業経験が豊富だと守らなければいけないものが出てくる。生産経験が豊富だと変えることに勇気がいる。自身にはこうした経験がないことをプラスにしたい」。

2月にキユーピーの社長に就任した髙宮満氏は自他ともに認めるポジティブな性格の持ち主だ。キユーピータマゴの社長就任直後に緊急事態宣言の発出。追い打ちをかけるように鳥インフルエンザが発生。就任前日にはロシアによるウクライナ侵攻が始まった。そして現在も食料インフレやコスト高騰が続く。厳しい環境下で舵取り役を務めることになったが、開発やマーケティング畑で培った経験と持ち前のバイタリティーで逆境を乗り越える。

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グループの魅力を創るために4つの視点を掲げた。まず「食と健康への貢献」。食を通じて人々の健康に貢献することは、当社グループにとってやりがいのあるもの。得意とする卵とサラダは健康イメージが強い。最近では「ペイザンヌサラダドレッシング」を用いた新たな食提案に内中外食で展開するグループ総力で取り組んでいる。

その先にはさらなる健康を意識した商品開発がある。トクホや機能性表示食品の開発には力を注いできた。機能性表示食品のポテトサラダを上市したほか、健康訴求型のマヨ・ドレは商品群が充実してきている。

2つ目は「持続可能性への挑戦」。サステナビリティの取り組みには手間と費用がかかる。これをコストととらえず投資と考えるべきだ。CO2削減、脱プラなどは積極的に取り組まないと、企業として持続不可能になる。一方、自社の得意分野でのサステナビリティには、まず主力製品であるマヨ・ドレで貢献したい。「テイスティドレッシング」では容器の素材に再生プラを使用している。

ほかにもサラダクラブのパウチもバイオマスプラを用いた。サラダは野菜の未利用部分を飼料原料とし、発酵させて濃縮したものを肥料として再利用する取り組みも推進している。これによりサラダクラブ全7工場での未利用部分の廃棄はゼロに近づいた。卵も昭和30年代には、殻と卵殻膜の循環プロセスを確立済みだ。おいしさと日持ちの両立は食品ロス低減の観点からも最大のテーマ。サラダクラブの千切りキャベツの消費期限は加工日プラス5日間。さらに延長できないかと検討を進めている。

3つ目は「お客様とのつながりをさらに深める」こと。コロナ禍で工場見学をオンラインで実施した。オンラインならではの財産を得たが、今後はリアル開催も再開したい。リアルにはリアルの良さがあり、双方を通じてお客様とのコミュニケーションを強化する。SNSを使った情報交換も重要だ。企業姿勢を確実に消費者に伝えていきたい。5月には「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」も開業できた。施設コンセプトには、お客様に野菜を好きになっていただきたいというメッセージを盛り込んだ。

4つ目は「自由闊達に挑戦し、悦びを分かち合えるグループに」。従業員には「自己実現」のために自分の将来の姿を思い描いてほしい。そして、組織で自分がどんな役割を期待されているかという「期待役割」について考えてほしい。未来を思い描き、業務と重ねることができれば、仕事にやりがいを感じることができる。自分の存在価値を高められるはずだ。

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髙宮満(たかみや・みつる)1961年4月22日東京都生まれ、61歳。1987年キユーピー入社、2012年研究開発本部長、13年執行役員、15年マーケティング本部長、17年ファインケミカル事業担当、19年上席執行役員、20年キユーピータマゴ社長、22年キユーピー社長