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豊かな自然資本を活用 日本の「食」の基盤構築を図る 農研機構 理事長 千葉一裕氏

 日本の農業・食品分野における研究開発を担う農研機構。今年4月、向こう7年の方針をまとめた「第6期中長期計画」が始動するとともに、新たに千葉一裕氏が理事長に就任した。千葉理事長は東京農工大学学長などを歴任。自らの起業経験から、研究成果の社会実装において「事業性」の観点を重視する。食と農の環境が激変するなか、農研機構が対処すべき課題は何か。千葉理事長に今後の取り組みを聞いた。

  ◇  ◇

――農業の環境変化、対応は待ったなし。

千葉  第一に気候変動の問題がある。また、人口の増加により世界的に食料が不足。今よりも1.5倍の農産物が必要になる。農業には淡水が必要だが、淡水の奪い合いともいえる状況に。土地も不足し、森林伐採で農地にすることももはや限界に来ている。

 日本では特に、中山間地における農業者の減少が進む。日本の食料自給率は38%だが、その4割を中山間地に依存している。中山間地の生産力が低下すれば、食料自給率も悪化する。食料価格は今後も上がり続けると予想され、国民の消費構造、ひいては日本の産業構造全体に大きな影響を及ぼしかねない。

――豊かな自然資本は日本の大きな強み。

千葉  農薬・化学肥料を大量に使えば農産物の増産も可能ではあるが、化石燃料依存による土壌の劣化や環境汚染といった問題を招いてしまう。私はこれを「負の外部性」(=ネガティブ・エクスターナリティ)と呼んでいる。

 これをポジティブ・エクスターナリティに転換する上で、日本の豊かな自然資本は大きな強みとなる。自然との共生ともいわれるが、農業生産活動を通して自然資本を増強させることができる。農林水産業のあるべき姿として、今後必ずやり遂げなければならない。

――食の価値創造に向け基盤構築を後押し。

千葉  「第6期中長期計画」では、食料安全保障と食料自給力の向上、開発技術の国内外への展開、農産物・食品の輸出拡大と新産業の創出といった課題を設定している。しかし、農研機構の存在意義として、国民の健康を守るため「日本の食の基盤構築」が一番の重点項目になると思っている。

 自然資本のポテンシャルを最大限活用し、クオリティの高い日本の食の基盤をより強固にしていく。最先端技術を応用することで、食品の保存性向上、フードロス削減といった価値を創出できる。これらは農業の範疇にとどまる話ではない。国家レベルの巨大産業の発想で、基盤構築を後押ししたい。

――産官学連携で農研機構の役割は大きい。

千葉  研究成果を社会実装する上で産官学連携は欠かせない。しかし、日本の高度人材の供給力は他の先進国の3分の1に過ぎない。単純に最先端研究者を3倍にするのではなく、いかにして社会に活力を与えるリーダーを増やすかが大事だ。

 大学においても農業分野における最先端の研究が進んでいるが、その「事業性」までは見えていない場合が多い。地域を何でどうやって活性化するのかを考え、仲間を引きつけ、そして牽引できる人材が必要である。

 農研機構には全国に実証拠点がある。北海道から沖縄まで全国の大学とともに地域を活性化するインフラは整っており、農研機構は産官学連携においてハブとしての役割を果たせると考えている。

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