ヤグチ 萩原啓太郎社長 業務用流通の活性化へ機能価値・提案力を強化

「業務用食品の発展に貢献できるよう頑張っていきたい」と語るのは、ヤグチの萩原啓太郎社長。昨年8月30日の社長就任から半年が経過、業務用流通の中核を担う一次卸として得意先卸店、メーカーとの取り組みを深め、「今年は外食復活の年にしたい」と意気込みを示す。

年末にかけて第8波の感染拡大の影響も懸念されたが、「単月ではコロナ前の売上を上回ってきており、明るい兆しが見えつつある」と業務用市場のさらなる浮上に期待を込める。

一方で、「売上の増加には昨年来の値上げによる押し上げ効果がある。卸段階での値上げは進んでいるが、最終ユーザーである飲食店は値上げラッシュに苦慮されている。コロナの行動制限がなくなり、客足は戻りつつあるが、食材・光熱費・人件費が高騰し、飲食店の経営環境は厳しい。長らく続いたコロナの影響に加え、コスト上昇により利益が取れず、廃業を選択する店が増える可能性もある。特に地域に密着した個人飲食店は客離れへの心配から、値上げに踏み切れないケースも多い」と警戒感を示す。

こうした中で社長就任後、初となった昨年秋の展示会では「単価アップで利益改善! 気分が上がるレストランメニュー」をテーマに、メーカーと業務用卸店が連携してワンランク上のメニューづくりによる客単価アップを提案。来場した業務用卸店関係者・ユーザーが一目で分かるよう、出展メーカー各社のブースでお薦め商材を分かりやすく表示したほか、各コーナーでのメニュー提案にも工夫を凝らし、メーカー・卸が二人三脚で「単価アップで利益改善」に取り組む姿勢を強く印象づけた。

「年明け以降も値上げラッシュは続いており、(外食業界にとって)単価アップと利益改善の取り組みは大きな課題となる。3月の見本市では、さらに中身をレベルアップして役立つ提案に努めていきたい」と語る。

また、メーカーと地域の業務用卸店をつなぐ一次卸としての情報提供機能も強化。食材検索サイト「食材プロ」を活用し、展示会出品アイテムやレシピの閲覧、メーカー商品の資料ダウンロードなど、これまで以上に使いやすく・役立つサイトとして機能を拡充する。

2023年の展望では「コロナ禍で人手不足が顕著になり、DX推進を検討しなければならない流れが一気に加速した。その中でさまざまな分野でイノベーションが進んでおり、新規開拓・販路拡大のチャンスは広がっている。急激な為替変動や原料高によるコスト高は逆風ではあるが、業界全体が薄利体質から脱却する機会でもある」と意欲を示す。

今後の経営方針については「萩原会長、栗栖相談役が進めてきたASK21計画を踏襲し、営業力・機能・財務基盤・組織力の強化をしっかりと進めていく」としたうえで、「マーケットやユーザー・卸店のニーズをくみ取り、仕入れ先であるメーカーと共有していくことが重要な役割。今期から販売と仕入れが一体となった事業部制を導入し、『お得意先様の購買代行・仕入先様の販売代行』というヤグチの機能をさらに発揮し、市場の活性化に貢献していきたい」と語る。

萩原啓太郎(はぎわら・けいたろう)氏=1987年5月11日生まれ、35歳。2010年早稲田大学理工学部経営システム工学科卒、10年マルハニチロ食品入社、16年3月慶應義塾大学大学院経営管理研究科卒。16年4月ヤグチ入社。19年経営戦略室長兼販売戦略室長(部長)、20年取締役執行役員、21年取締役専務執行役員、22年8月代表取締役社長。

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