コーヒー新潮流「エスプレッソマティーニ」おいしく作れるのはバリスタ?バーテンダー?The Okura Tokyoの気鋭が語る

クラシックカクテルで世界的に人気なエスプレッソマティーニをはじめとするコーヒーとアルコールの組み合わせを巡り、バリスタとバーテンデーの双方からのアプローチが強まっているという。

ヨーロッパでのコーヒーにウイスキーやスピリッツなどを加えて作るオリジナルコーヒーカクテルの人気の高まりを受け、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)は13年、アイリッシュコーヒー2杯とコーヒーを使用したアルコールベース2杯のデザイナードリンクを競うコンテスト「ジャパンコーヒーイングッドスピリッツチャンピオンシップ」(JCIGSC)を開催した。

2020年の開催は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で見送りになってしまったが、もし開催があったならば同コンテストの有力な優勝候補の1人となっていたかもしれない人物は、ホテルオークラ東京の料飲部料飲サービス部に所属しThe Okura Tokyoのメンバーである「オーキッドバー」でシニアバーテンダーを務める山下幸輝さん(31歳)。

山下幸輝さん(オーキッドバー)
山下幸輝さん(オーキッドバー)

このほど取材に応じ、最近の業界動向について「バリスタがコーヒーの幅を広げるためにバーのほうへ進出しているとともに、バーテンダーもコーヒーを副材料として取り入れて、バリスタの勉強をし始めていると理解している」と説明する。

バーテンダーがつくるコーヒーカクテルの特徴の一つは、コーヒー豆を副材料ととらえている点にある。コーヒーに欠けている要素を他の材料で補うことで、そのコーヒー豆が持つ味わい以上の味わいに仕立てることができるという。

「コーヒーが持ち合わせていないフレーバーを他の副材料と掛け合わせることで、そのコーヒー豆を上回るおいしいものがつくれるのは、われわれバーテンダーだと思っている」と自信をのぞかせる。

「エスプレッソマティーニ」。店名のオーキッド(洋蘭)をモチーフとした店内の意匠を描いて提供している
「エスプレッソマティーニ」。店名のオーキッド(洋蘭)をモチーフとした店内の意匠を描いて提供している

山下さんはバーテンダーを目指して20歳の頃、ホテルオークラ東京に入社。コーヒーをはじめとする「基礎知識の強化」の会社方針の下、コーヒーの勉強を始めたのは昨年からで、コーヒーマイスター(SCAJ)とコーヒーインストラクター2級(全日本コーヒー商工組合連合会)の2つの資格を取得し、The Okura Tokyoの19年9月11日のグランドオープンに向けて4つのコーヒーカクテルを考案した。

その目玉が「エスプレッソマティーニ」(税・サ別2千円)で「クラシックカクテルの中で歴史が浅く、エスプレッソを使うのは大前提だがレシピが確立されておらずバーテンダーも挑戦しやすい」と語る。

市販のコーヒーリキュールは人工的な味わいを避け自然な甘みを出すために使用せず、コーヒーバッグを24時間漬け込んだシロップにエスプレッソを足し、そこにベースとしてラム酒を加える。

コーヒーはブラインドテイストのコンペで選んだ「トラジャブレンド」を採用。ベースのアルコールについては「エスプレッソの味を引き立たせるために無味無臭のウォッカをベースにするのが一般的だが、サトウキビの煮汁を原料とするラム酒のほうがコーヒーの果実味を引き出せる」とみており、ウォッカはアルコール感を強めるために隠し味的に少量の使用にとどめている。

コーヒーバッグを24時間漬け込んだシロップ(オーキッドバー/ホテルオークラ東京)
コーヒーバッグを24時間漬け込んだシロップ(オーキッドバー/ホテルオークラ東京)

仕上げには「カクテルの味をギュッと引き締める」ためマンダリンオレンジのビターズ(苦味酒)を一、二滴加えてシェイクする。シェイクされることで、急冷とともに空気を取り込みまろやかな口当たりを実現。その上で「カクテルは見た目が大切」であることから、泡立つ液面の上にラテアートの技術を取り入れ、店名のオーキッド(洋蘭)をモチーフとした店内の意匠を描いて提供している。

昨年、外出自粛が緩和された頃から注文が増えつつあったが、再びコロナの感染拡大で不透明な状況になっている。そうした中、「いつかコーヒーを主材料としたカクテルと、コーヒーを副材料としたカクテルで競ってみたい。いろいろ制限がある中で、バーテンダーでもおいしいコーヒーカクテルが提供できることを知ってもらいたい」と意欲をのぞかせる。