約3割しか有効活用されていないとされるカカオの実に、美容製品への活用など新たな可能性が浮上した。
明治は10日、カカオ豆の種皮・カカオハスクに他の植物よりも多量のセラミドが含まれていることを発見し、カカオハスクからセラミド(カカオセラミド)の抽出・素材化に世界で初めて成功したと発表した。
カカオセラミドの抽出・素材化は、帝京大学と成分研究を行う中で独自の手法により実現。成分研究は今後も精度を高めるべく継続される。
現在、カカオの実から有効活用されているのは、チョコレート原料のカカオ豆にほぼ留まり、チョコレートの製造過程で取り除かれるカカオハスクの大半は未活用のままになっている。
今回、カカオセラミドの抽出・素材化を機に異業種との協業の輪を広げることで、原料を余すところなく使用する取り組みを進めてサステナブルな社会に貢献していく。
10日発表した明治の松田克也社長は「カカオを国境や性別を超えて、もっと価値のあるものにしていき、その技術や知見を広く共有することでカカオ産業全体を豊かにしていく。自然、地球がステークホルダー」との考えを明らかにする。
セラミドは、肌の表面を覆う表皮に含まれる保湿因子のひとつで、スキンケア成分として多くの化粧品に含まれる。
その種類は、肌に塗る用途で主に使用されるヒト型遊離セラミドと主に健康食品素材として食されるグルコシルセラミドに大別され、カカオハスクの中にはヒト型遊離セラミドが極めて多く含まれていることが判明した。
明治は、今回の発見を、サステナブル活動の推進やサステナブルな発信強化に留まらず、食品・非食品の両方で新たなビジネスチャンスと捉えている。
食品では、アルビオンとコラボレーションしてカカオセラミド(カカオグルコシルセラミド)配合のチョコレートとゼリー入りドリンクをサロン・デュ・ショコラ東京会場とサロン・デュ・ショコラ公式オンラインショップで17日から販売する。
非食品の取り組みとしては、グローバルなネットワークを持つZero Gravity(ゼログラヴィティ)社と国内外における化粧品分野での開発について協力してカカオセラミドの化粧品原料化を目指す。
加えて、バイオプラスチックの分野で独自の技術を持つヘミセルロース社とともにカカオセラミド抽出後に残ったカカオハスクを使用した商品容器へのアップサイクルにも取り組む。
今後も協業パートナーを迎え、将来的にはカカオセラミドの化粧品への使用や商品化も目指していく。
化粧品への使用や商品化にあたり、天然由来のヒト型遊離セラミドは希少で、現在、化粧品に使用されているもののほとんどが合成セラミドとなる。
植物由来のセラミドはグルコシルセラミドが多く健康食品で既に使用されるなど研究が進む一方、植物由来のヒト型遊離セラミドは未知の部分が大きいという。
カカオハスクにはヒト型遊離セラミドの含有量が多いため、他の植物由来のヒト型遊離セラミドに対して抽出に関するコストダウンも期待される。
明治は、異業種も含めたパートナーとの協業を通じてカカオセラミドの価値を高め、世の中に届けるために新たなプロジェクト「meiji CACAO BEauty Project」を始動。
プロジェクト名の“BE”には、“Beauty(自分自身の美しさ)”“Benefit(社会全体の便益)”“well-Being(地球全体のよりよい暮らし)”を目指すという意味が込められている。