農水畜産業水産カキ業界の展望を聞く〈後編〉 シーパジャパン 吉本剛宏社長 “シングルシード”定着 新規事業も積極展開

カキ業界の展望を聞く〈後編〉 シーパジャパン 吉本剛宏社長 “シングルシード”定着 新規事業も積極展開

――シングルシード養殖の展望を。

吉本 高い品質の殻つきカキを効率的に生産する方法として、シングルシード養殖は広がっている。全国牡蠣協議会が主催する「牡蠣-1(カキワン)グランプリ」ではそれに取り組んでいる生産者が上位を占め、カキ愛好家だけでなく、一般消費者にも「シングルシード」という用語が認識されるようになってきた。

 当社のシングルシード養殖の根幹技術であるバスケットの販売は毎年大きく伸びている。先述の通り、人工種苗の必要性は今後ますます強まり、同時に適した養殖方法としてシングルシード法は一般化すると見込まれる。

――前期(25年6月期)の業績は売上高が約2倍に伸長しました。その要因は。

吉本 一つはシングルシード養殖が本格的に普及してきたこと。生産者の認知が広がり、生産量も増えた。もう一つが微細藻類バイオ装置の導入実績が増えたこと。既存事業と新規事業の両方が大きく伸長した。今期も1.5倍の売上高を計画している。

――新規事業である微細藻類培養装置とはどういうものですか。

吉本 微細藻類とは養殖の食物連鎖の根源であり、幼生、稚貝、稚エビ、稚ウニなどへの直接の餌になるものだ。しかし、従来の培養方法は労働集約的で、しかも不安定だ。オープンな水槽で培養するため細菌などが混入し崩壊することもあり、労働力をかけても失敗するリスクが高い。

 当社が販売するカナダ製の装置は培養を自動化、安定化させる。5tの水槽15基分の生産が1台の装置でまかなえるため、労働力も床面積も圧倒的に抑えられる。ランニングコストも家庭使用の電気代程度で済む。

 種苗生産者にとって微細藻類の培養にかかるコストは全体の4割を占める。微細藻類の生産量に比例し種苗の生産量も決まるため、課題を解消することで種苗生産のキャパシティを底上げできる。

 サプリメントやコスメの原料としても利用されており、用途は広い。将来に向け航空機の燃料としての使用を目的に、大手製造業も関心を示している。

――そのほか新たな事業は。

吉本 フランスの企業、EMYG Aqua社が製造する浄化装置の総代理店権を取得した。ファインバブルを中心とした技術により、カキの大腸菌などを除去し安全性を高めるもので、テイラー(米国)、ジェラルドー(フランス)など世界の主要な生産者が使用している。

 日本のカキ浄化の多くは、かけ流しやUVによるシンプルなものであり、高い安全基準を設定する海外への輸出が増える今、より安全を訴求できる方法への需要があると考える。

 さらに、欧米では浸透している「貯蔵」という機能も備える。水質と水温を管理しながら、浄化した後のカキの良い状態を維持し、生産者が出荷するタイミングを選ぶことができる。台風や赤潮といった自然災害にも対応し、販売先の要望に合わせた出荷調整が可能になる。

 今後も海外で実績があり品質と効率を向上させるシステムを日本に導入し、養殖業界の進化に貢献したい。

(おわり)

関連記事

インタビュー特集

Mizkan フルーティス刷新(後編) 「新・果実体験」を提供 リフレッシュしたい時に

Mizkan(以下ミツカン)は今春、食酢飲料「フルーティス」ブランドをリニューアルした。家庭用では業務用で人気の「シャインマスカット」「あまおう」「白桃」を、家庭用・業務用の双方で「ざくろ」を新発売した。

Mizkanフルーティス刷新(前編) 果実のおいしさが主役の新製法 マーケティング本部 田中菜々美氏に聞く

Mizkan(以下ミツカン)は今春、食酢飲料「フルーティス」ブランドをリニューアルした。

学生が育てるアーモンドの木 明日の社会へ価値循環 デルタインターナショナル×キャンポスブラザーズ

アーモンドの世界的産地である米カリフォルニア州でも、トップクラスの供給量を誇るキャンポスブラザーズ社。日本の販売総代理店を務めるデルタインターナショナルでは、学生の手でアーモンドの木を育てて商品化することを目指す玉川大学の...

原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

 明治9年(1876年)、北海道で新たな産業を興すべく設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツとするサッポロビール。創業150周年を迎える今も、その“開拓”の精神は息づく。ビール会社としての枠にとらわれない発想力を武器に、事業領域拡張の最前線で奮闘する人物に迫った。一次産業を担う各地の生産者と企業のバイヤーをつなぎ、農林水産物の需要創出をサポートするサッポロビールの地域創生事業。その原点は、外食企業のコンサルティングを手がける部署で九州の拠点に配属されていた、一人の担当者のひらめきだった。

カキ養殖の展望を聞く〈前編〉 “殻付き”市場拡大 環境変化と効率化に対応 シーパジャパン・吉本剛宏社長

瀬戸内海で養殖カキが甚大な被害を受け、生鮮市場だけでなく加工メーカーや流通にも影響が及んでいる。こうした中、従来の養殖方法とは異なるシングルシード養殖法が注目されている。