12.1 C
Tokyo
15 C
Osaka
2025 / 11 / 10 月曜日
English
トップニュース「地元のファンづくりから」 日本酒蔵再生の歩み語る 田中文悟氏
2025台湾食品調達商談会 in Osaka by 台湾貿易センター

「地元のファンづくりから」 日本酒蔵再生の歩み語る 田中文悟氏

「酒蔵の再生でまず大切なのは地元の理解を得てファンになっていただくこと」と話すのは日本酒キャピタル代表取締役の田中文悟氏。大手ビールメーカーの営業から転身して独立し、これまで幾つもの酒蔵の再生を手がけてきた。現在は事業承継した5蔵を束ねる持株会社の代表を務める。

「知名度の低い銘柄のリブランディングは最低3~5年かかるし、地道な活動の積み重ねだ。とはいえ目の前から地方の酒蔵がなくなる事態は阻止したい。業界は多くの課題を抱えるが、市場規模をどうやったら維持・拡大できるか皆で考えたい」などと語る。

田中氏は、日本酒ブランド「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」を運営するClear社とM&Aコンサルティングのストライク社が6月11日に都内で共催したセミナー「日本酒とM&Aのリアル」に参加。10年以上の交流があるというClearの生駒龍史代表取締役CEOと対談形式でこれまでの取り組みなどを語った。

独立後に秋田の「阿櫻」、富山の「銀盤」、新潟の「加賀の井」などの再建に携わった後、2018年から事業承継した酒蔵をグループ化。現在は秋田の大納川、富山の魚津酒造、岩手の紫波酒造店、鹿児島の日當山醸造、岐阜の平和錦酒造が名を連ねる。

グループの5蔵は決して業界のメジャーな存在ではない。承継した当初は「経営状態の厳しさはもちろん、地元の方に愛されている銘柄でもなかった」という。まずは地元向けに説明会を開き財務状況や再建方針などをていねいに伝えた。そうしたコミュニケーションを重ねることで応援団になってもらい、地元の酒屋や飲食店での取り扱いも地道に増やしていった。

再建の過程では社員との対話も重視。蔵人やスタッフだけでなく、承継企業の元オーナー経営者も雇用し、「疲弊した酒蔵がもう一度元気を取り戻せるよう、社員と語り合いながら経営していくことを大切にしている」と述べる。いまも全国各地のグループ蔵を月1回は訪問し対話を重ねる。これまでの実績について、「規模にもよるが、例えば3000万円まで落ち込んだ売上を2億円程度に引き上げることはできるようになってきた。どの蔵もかつて1.5億円ぐらいは売っていたからだ。ただ、それ以上になると設備更新などが必要になってくる」と説明した。

各蔵は酒質も向上している。大納川は全国新酒鑑評会で令和5酒造年度、同6酒造年度と2年連続で金賞を受賞した。紫波酒造店は新ブランド「紫宙(しそら)」を立ち上げ、「スター」「ダイヤモンド」「ハート」などを上市。ラベル違いで多様な味わいが楽しめる。

関連記事

インタビュー特集

カゴメ次期社長 奥谷晴信氏 国内、新たな成長軸を模索 国際、M&Aも視野に成長を

カゴメの次期社長(2026年1月1日付)に内定した奥谷晴信現取締役常務執行役員(一部既報)。アジア事業カンパニーやグローバルコンシューマー事業部、国際事業本部などキャリアの多くを国際事業に携わってきたが、21年以降は国内事業でも手腕を発揮。

ウーケ 花畑佳史社長 パックごはん、第4工場が来春本格稼働 国内外に新規拡大増やす

利便性と品質向上により、年々市場を拡大するパックごはん。最近はコメ価格高騰の影響や防災食への利用増加が相まって、需要はさらに伸びている。

明星食品 新提案「麺の明星 主食麺宣言!」 4つの軸の袋麺アレンジで食事性アップ

明星食品は、こだわりの麺技術で開発した商品ラインアップを全面に押し出し、新たに「麺の明星 主食麺宣言!」と銘打ったプロモーションを大々的に展開している。

イチビキ 中村拓也社長 豆みそ・たまりNo.1の矜持を 人口減睨み業務用・海外強化

安永元年(1772年)創業の醸造・食品メーカー、イチビキ。今年6月20日付で同社社長に就いた中村拓也氏は、98年入社。

「大豆ミート」対談 マルコメ・日本製鋼所 次世代型食品へ課題と提言

健康志向が高まり、プラントベースフード(PBF)にも関心が集まる中、2023年9月に大豆ミートメーカー5社が発起人となり、「日本大豆ミート協会」が設立された。

〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉シーフード編①大西洋の自然が育む恵み 海洋資源の保護に重点

〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉シーフード編①大西洋の自然が育む恵み 海洋資源の保護に重点