なごやめしの「みそカツ」「みそ煮込みうどん」に欠かせない調味料「豆みそ」。リーディングカンパニーとして中京エリアを牽引してきたマルサンアイが、愛知県岡崎市のみそ工場を約1年半かけて閉鎖し、生産規模を10分の1に縮小すると発表、エリアのみそメーカーなどに衝撃が走った。来年以降、徐々にスーパーの棚割りが変更されるとみられるほか、豆みその生産量が大きく減少することで、伝統の味の衰退を危ぶむ声も聞こえている。
みそ業界の市場規模はおよそ957億円と推定。マルサンアイは、マルコメ、ハナマルキ、ひかり味噌に次ぐシェアを誇っているとされる。
一方で、全国味噌工業協同組合による「みその種類別出荷数量」の集計では、22年の「豆みそ」出荷数量は1万7千390t、2000年の2万5千985tから大きく減少している。
また、物価の高騰も影響している。豆みその主原料となる「大豆」、農林水産省による貿易統計では22年の輸入量は約350億t(前年比7.1%増)に対し、輸入金額は3千390億円(前年比48.9%増)と大きく上昇。そのほか、物流、包材、エネルギーコストなどあらゆるものが高騰している中で、利益確保ができない状況に陥っている。ただ、需要が低いこともあり価格改定は進みにくいのが現状で、各メーカーともスーパーとの交渉は順調とは言えない。
食品スーパーのみそ売場では、同社のほか、名古屋のイチビキ、ナカモ、三重のサンジルシ醸造、豊田の桝塚味噌、岡崎のカクキュー八丁味噌、まるや八丁味噌など、地元以外ではマルコメ、ひかり味噌、神州一味噌などが並んでいる。25年までに大きく棚割りが変更されるとみられるが、いずれかのメーカーが商品を広げるのか、売場そのものが縮小されるのか予測できない状況で、不安の声が広がっている。