UCCの食べるコーヒー「ヨインド」とは? 「抽出後のコーヒー粉の味・香りも余すことなく取り込みたい」 新発想で生まれた

 UCC上島珈琲が“飲まない”コーヒーあるいは“食べる”コーヒーとして11月1日から販路や数量を限定して販売する新カテゴリーの食品「YOINED(ヨインド)」は、UCCグループが掲げるパーパス「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」のもとで開発された完全なるプロダクトアウト商品だという。

 着想のきっかけは、レギュラーコーヒーの抽出後、フィルターに残る抽出後のコーヒー粉(コーヒーグラウンズ)を“もったいない”と感じたことだという。

 10月26日発表したUCC上島珈琲の小坂朋代マーケティング部ブランドマネジメント部担当課長は、抽出後のコーヒー粉が廃棄される傾向にあることに触れ「“焙煎したコーヒー豆の味・香りを余すことなくすべて味わうことはできないか”と思い立ったのが『ヨインド』の発想の起点となった」と振り返る。

左からUCC上島珈琲の小坂朋代マーケティング部ブランドマネジメント部担当課長とUCCコーヒーアカデミー講師の村田果穂氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左からUCC上島珈琲の小坂朋代マーケティング部ブランドマネジメント部担当課長とUCCコーヒーアカデミー講師の村田果穂氏

 「ヨインド」は、焙煎したコーヒー豆を、抽出せずに丸ごと-196℃で凍結粉砕したものであるため、抽出したコーヒーを飲むよりも香りを強く感じられるのが特徴。

 「通常、コーヒーを飲んで感じられるのは、コーヒー豆から一部抽出された味や香りとなる。『ヨインド』にはコーヒー豆がまるごと粉砕されて入っているため、抽出されたコーヒーでは残されてしまうものも味わうこともできる」と説明する。

 抽出せずにまるごと粉砕しているため、「ヨインド」で感じられる香りは、コーヒーを飲む前に鼻から直接感じる香り(オルソネーザルアロマ)ではなく、コーヒーを口に含み嚥下するたびに口腔内から鼻腔へと伝わるレトロネーザルアロマとなる。

 「香りの強度としてもオルソネーザルアロマよりもレトロネーザルアロマのほうが強く感じる。『ヨインド』はレトロネーザルアロマが特徴で、粘り気もある。コーヒーを飲むと香りはすぐに咽を通り過ぎてしまうが、『ヨインド』は口の中にしっかり留まってくれるからこそ豆本来の甘みや酸味が感じられる」という。

焙煎したコーヒー豆を抽出せずに丸ごと-196℃で凍結粉砕したもの(左) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
焙煎したコーヒー豆を抽出せずに丸ごと-196℃で凍結粉砕したもの(左)

 香りの感じやすさはおいしさに直結する。UCCコーヒーアカデミー講師の村田果穂氏は「おいしいと感じる情報は味覚が20%で残りの80%が香り」と指摘する。

 それを実感できることとして、鼻をつまみながらフレーバーチョコを咀嚼し、咀嚼の途中で鼻から息を吸い込むと香りとおいしさが格段と強く感じられるようになる行為を紹介した。

 「ヨインド」は、丸ごと凍結粉砕した豆に、丸ごと凍結粉砕した豆とは別の焙煎コーヒー豆から圧搾したコーヒーオイルを組み合わせ、それらを植物油脂でコーティングして砂糖などを混ぜ合わせたものとなる。

 植物油脂にはコーティングされた香りをとじこめる作用があり、コーヒーオイルも香りに作用する。コーヒーオイルは焙煎豆の15~20%しか含まれていない。

UCC上島珈琲の岩井和也R&D本部研究開発部担当課長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
UCC上島珈琲の岩井和也R&D本部研究開発部担当課長

 UCC上島珈琲の岩井和也R&D本部研究開発部担当課長は「コーヒーの香りは粉砕をピークに失われていく上に、細かくすると表面積が広がって香りが一気に飛んでしまう。そこで、コーヒーオイルと混ぜ合わせて植物油脂でコーティングすることで新鮮な香りを閉じ込めることができた」と語る。

 チョコレートと似た製造工程を経るため、「ヨインド」の見た目や口溶けはチョコレートに似ているものの、カカオ豆を一切使用していないため「味はチョコレートと全く異なる」と小坂担当課長は言い切る。

 豊かな香りが感じられることに加えて、抽出されたコーヒーに比べて食物繊維が摂取できて飲むコーヒーに比べてカフェイン量が少ないのも特徴。
 「抽出後のコーヒー粉に食物繊維が残されてしまうが、『ヨインド』は食物繊維をそのまま味わえる。最大で飲むコーヒーよりも6倍の食物繊維が含まれる。一方でカフェイン量は少ない。『ヨインド』1枚に使用するコーヒーの量は7.5gで飲むコーヒーよりも少ない」と説明する。

焙煎コーヒー豆から圧搾したコーヒーオイル - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
焙煎コーヒー豆から圧搾したコーヒーオイル

 豆にもこだわり、「ヨインド」にはエチオピアのシャキッソ地区のものを使用している。

 「飲むコーヒーで美味しいとされる豆でも『ヨインド』で美味しいとは限らなかった。ブラジルやブルーマウンテンなどいろいろな豆を試した結果、口の中での香りの変化が面白く社内での評価も高かったシャキッソの豆を選んだ」と語る。

 完全なるプロダクトアウト商品のため、製品化にあたり、課題となったのがネーミングだった。
 「固形のコーヒー」「ソリッドコーヒー」など複数を考案したものの、全く新しい製品のため味を想像しにくいものは手に取られないなどの懸念が浮上した。

 そこで香りに着目し、なかでも“余韻”をフックにすることでシーンや味が想像しやすくなると判断し「ヨインド」に決定した。

 フレーバーは2種類を取り揃える。

 コーヒー豆40%配合の「CRAZY BLACK」は、“狂おしいほど濃厚な香り”が楽しめるのが特徴。
 一方、コーヒー豆15%配合の「MELLOW BROWN」は、カフェオレのようなやさしい味わいに仕立てられている。

 「ヨインド」は、UCC上島珈琲の直営店11店舗と、公式オンラインストアで販売される。

 製品化がゴールではないとし、ユーザーの反応をみながらブラッシュアップしていく。
 産地の特長がはっきりと表れるため、ビーントゥバーのチョコレートのように産地ごとのラインアップも検討していく。油脂や砂糖の配合量で硬さも変えられることからチョコレートのようにバリエーションが広がる可能性がある。

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