日本企業のアジア進出を支援する本田事務所(本田哲也社長)は1日、日本企業のアジアビジネスの最前線と未来戦略を探るためのビジネスカンファレンス「Asia Insight 2026」を開催。基調講演で味の素社の中村茂雄取締役 代表執行役社長 最高経営責任者が登壇し、「経営戦略としてのコーポレートブランディング、グローバルで目指す企業価値の向上」をテーマに講演した。
講演に先立ち本田氏は、「宗教も言語もメディア環境も、国ごと、都市ごとに様相は異なるアジアには多様性の壁があり、一枚岩ではない」と語り、「アジアは戦略構築力×ローカルインサイトの両輪で攻略することが鍵」とし、ローカルインサイトを起点にした戦略コミュニケーションの重要性を指摘した。

基調講演で中村社長は、味の素グループの経営スローガンやパーパス、アミノサイエンス等を紹介したうえで、グローバル事業として「31の国・地域で121か所に拠点を置き、約6割の売上・利益を海外事業が担っている」「事業利益の41%はアジアから生まれている」など解説。グローバル企業の味の素が、どう海外に進出したかについては、「徹底的なローカライズ」として、「現地スタッフが市場に足を運び、後払いに頼らず代金を回収、現物商品を店主に渡す3つ『三現主義』により信頼関係を構築。これがアジア全域での基本的な考え方だ」と説明した。

製品やサービスを地域や文化に合わせて最適化することが「ローカライズ」だが、中村氏はアジア地域の事例を紹介しながら、商品開発と社会制度、サプライチェーンの3つの側面から「ローカライズ」を紹介した。
「商品開発のローカライズ」として、うま味、甘味、苦味も中心的な成分のアミノ酸(味の素)は、世界共通の言葉「UMAMI」として知られているが、「うま味は万国共通でも、おいしさは各国でバラバラ。そこで社員自らが台所に入り、家庭・生活者調査を実施。現地の食習慣を徹底的に研究した」と言う。
こうした経過で生まれたのがフィリピンの「GINISA」、タイの「Ros Dee」、インドネシアの「Masako」、マレーシアの「TUMIX」、ベトナムの「Aji-ngon」。これらはアミノ酸の研究から生まれた「おいしさ設計技術」により開発され、「一見地味な取組みのようだが、この知見の積み重ねが食卓でおいしいと言ってもらえる製品を生み出せる。自分たちのおいしさを押しつけず、相手のおいしさをみつけ、それを再現する調味料を開発。これがグローバル展開で大切にしてきた、おいしさのローカライズだ」とした。
「社会制度のローカライズ」では、ベトナムにおける栄養課題の解決の取組みを例に紹介。「妥協なき栄養」というポリシーのもと、日本の学校給食制度を応用したベトナムでの給食制度を紹介し、この取組みはインドネシアでもスタートしている。
「サプライチェーンのローカライズ」では、タイでの農家との取組みを紹介。味の素の原材料は、各国で入手しやすい植物性原料を使っており、タイではキャッサバを使用。タイの年間生産量は年間500万t。このうちの15~20%を味の素が購入。だがキャッサバ農家はキャッサバモザイク病に直面しており、22年から栽培協力や土壌診断、肥料開発などを通して無償支援。これが「キャッサバ農家の収量、収入アップにもつながっており、社会価値が経済価値に転換しはじめている」と言う。
これらもローカライズの成果だとし、これを支えているのはアミノサイエンスであり、味の素のグローバル展開とは「徹底的なローカライズ」と「アミノサイエンスによる研究開発」を掛け合わせたもので、これらを通して「人・社会・地位のWell-beingに貢献する新しい創出価値が生まれれる」としている。





