父の言葉

 バレンタイン前、父から「今年のチョコは気持ちだけで」とメールが届いた。傘寿を迎える父に洋菓子が胃に重いのかと思えば、理由は物価高。何もかも値上がりしているから無理をするなという。

▼食品業界の値上げは止まらない。原料価格の上昇に加えて、人手不足による人件費増、さらに運賃の値上がり。価格転嫁は避けがたく、菓子ひとつに幾重の負担が重なり、家計もまた節約を迫られる。かつては気軽な贈り物だったチョコレートでさえ、その例外ではない。

▼追い打ちをかけるのが遠い国の火種である。中東の戦火が原油価格を押し上げるとの報せが流れるたびに、輸送コストのさらなる上昇が懸念される。どこかで緊張が高まれば、価格という形で暮らしに跳ね返る。世界は思いのほか、台所とつながっているものだ。

▼先行きは見通せない。父の言葉の奥にあったのは節約の勧めだけでなく、娘を思う気持ちだったのだろう。高くなったから贈らないのではなく、形を変えて感謝を伝えればいい。甘さ控えめに、お酒を酌み交わすのもいいのではないか。

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