パン粉の生産量が減少している。全国パン粉工業協同組合連合会が調べた9月までの累計生産量は前年比4.7%減。コロナ禍1年目の2020年の減少幅(3.8%減)より大きい。
特に8月は11.2%の大幅減を記録した。同連合会の小澤幸市理事長(富士パン粉工業社長)は「暑すぎて、カツカレーやかつ丼など揚げ物の消費量が落ちたのでは」と推測する。例年だと人が集まるお盆があり、フライの多く入ったオードブルなどの需要が高まる時季だ。しかし、記録的な猛暑で外出の機会が減ったことも影響したと考えられる。
ただ、今年は夏を迎える前から生産量は前年を下回っていた。小澤理事長はコメの高騰をその一因に挙げる。例えば、弁当にまるごと1個入っていたコロッケが半分になり、トンカツはより安価な鶏肉を使った唐揚げや照焼きに置き換わるケースが増えた。コメが高騰した分を他の食材で節約しようという意識が、パン粉にとってマイナス要因となった。
一方、連合会では3年前から、物流費や人件費などの高騰を背景に、従来のような小麦粉価格だけに連動した価格設定を見直すよう呼びかけてきた。当時、理事長だったフライスターの関全男社長は現状について「小麦粉は主原料ではあるが、すべてではない。そういう考え方にスイッチしてきた」とみる。小谷食品の小谷一夫社長は「得意先にも、おおむね理解されるようになった。価格以上に安定的な供給が望まれている」と話す。ただ、そうした考えが浸透し切っているとは言えない。小澤理事長は「きちんと転嫁できている企業と、積み残してきた企業との差がついている」と懸念を示す。
この秋も輸入小麦の政府売渡価格は5銘柄平均で4%下がったが、最低賃金の上昇で人件費はさらに上がり、物流においては配送費以外の付帯作業が計上され負担が増している。値上げにより粗利を確保できた企業でも、それを上回るコストアップのため十分な利益が得られていないケースが少なくない。価格転嫁できなかった企業はなおさらだ。
今年7月、ヤマエグループが宇佐パン粉(大分県)を子会社化した。ほかにも廃業や買収など、経営不振や後継者問題を背景に今後、業界再編が進むと考えられる。


