逆光線(コラム)「不安」を強調する理由は

「不安」を強調する理由は

あの9.11事件後の1年間、アメリカでは自動車事故による死者数が大幅に増加した。なぜか。強烈な印象を残したテロ事件への恐怖から、人々が飛行機を避けて車での移動を選ぶようになったためだという。事故死者の増加数は、テロの犠牲となった乗客数の6倍超に及んだ。

▼頻度の少ない出来事ほど多く、多い出来事ほど少なく見積もる。人間にはそんな認知バイアスが備わっていることが知られている。

▼「一部の外国人による違法行為やルール逸脱に対し、国民の皆さまが不安や不公平を感じている/こうした行為には政府として毅然と対応する」(所信表明演説で高市総理)。

▼外国人刑法犯の昨年の検挙件数は約1万8900件。コロナ前後で数割の増減はあるが、3万件ほどで推移していた20年前までに比べて大幅に低い水準だ。この間に在留・訪日外国人は数倍に増えたことから、人数当たりの件数はそれ以上に減少した。違法行為を行う者がどこの国籍であろうと厳正に対処するのは当然。だが今、外国人だけを取り上げて「不安」を強調する理由は何だろうか。

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