「大豆ミート」対談 マルコメ・日本製鋼所 次世代型食品へ課題と提言

健康志向が高まり、プラントベースフード(PBF)にも関心が集まる中、2023年9月に大豆ミートメーカー5社が発起人となり、「日本大豆ミート協会」が設立された。日本の大豆ミート消費量は、欧米に比べてまだ少ないが、スーパーの店頭やレストランチェーン及びバーガーチェーンでは大豆ミートを使ったメニューが固定層に支持され、次世代型の食品として次第に認知されてきた。そこで大豆ミート業界トップのマルコメの鈴木淳哉専任課長(研究開発本部開発部海外開発課兼商品開発課)と、新規会員として8月に協会の正会員となった大豆ミート製造機を展開する日本製鋼所(JSW)の池田雄輔営業所長(樹脂機械事業部東日本営業所)、梅田光秀氏(イノベーションマネジメント本部先端技術研究所成形加工グループ)に、現状の市場認識と将来性等について対談形式で語ってもらった。

マーケットは「踊り場」状態

日本製鋼所の池田雄輔氏
日本製鋼所の池田雄輔氏

…両社の大豆ミートへの取組み概要を教えて下さい。

マルコメ BtoC事業としては2015年に「大豆のお肉」シリーズを発売し、「ダイズラボ」ブランドとして多様な製品展開を開始。「大豆のお肉」の可能性をさまざまなカテゴリーで展開することで「大豆」の可能性を提案し、消費者にアプローチしてきました。また、企業に大豆ミートの素材を加工用原料として提供するBtoB事業も展開しています。

JSW 当社は大豆ミート製造工程で必要な食品製造用エクストルーダー(押出機)を製造する会社で、エクストルーダーは主にプラスチック用途として使われてきたが、87年に大豆ミートを含めた食品用を開始。25年8月に日本大豆ミート協会に正会員として入会しました。

…現在の大豆ミート市場の認識は。

マルコメ 最近の市場は、踊り場的な状況が続いています。市場調査によると、35%弱の生活者は「大豆ミートを食べる必要はない」と捉え、「おいしくない」「パサパサして、食感が肉に近くない」などの意見が上位を占め、これらが阻害要因となっているようです。日本は豆腐や納豆、ゆば、がんもどきなど大豆由来の伝統食品と深いかかわりがあり、大豆ミートにはコンサバティブなイメージがあるためでしょう。

JSW 食品メーカーは、まだ大豆ミートへの投資にはハードルが高く、課題感があると認識しているようです。食料危機が叫ばれる中、将来的に植物性食材の消費量が増えるだろうと思われ、当社としてはメーカーの協力を仰ぎながら、日本大豆ミート協会を通じてビジネス拡大のきっかけにしたいと思っています。

「食育」による啓発活動を

マルコメ きっかけづくりは大事ですね。当社では小学生や親子を対象に食育活動の一環として大豆ミートのイベントを実施。子どもの頃から大豆ミートを知ってもらい、大人になっても大豆ミートのファンになってもらうため、そのきっかけ作りを行っています。

JSW おもしろい展開ですね。当社はプラスチック加工も展開しており、使われなくなったプラスチックの廃材を給食プレートに再利用していますが、大豆ミートもサスティナブルやSDGsの観点から、子どもの頃からアプローチすることは大事でしょうね。

マルコメ 大豆ミートは牛豚鶏に続く「第4の肉」として注目され、低脂質・低コレステロール、高たんぱくで食物繊維をたっぷり含み、他のお肉と比べて環境負荷が少ないことから次世代フードとも呼ばれています。今では小・中学校の頃からサスティナブルやSDGsの授業があり、食育の観点から子どもたちに大豆ミートをアプローチすることは重要ですね。

教育現場では、当社は味噌を対象とした工場見学を定期的に実施。大豆ミートの工場現場も見学してもらい、原料に何を使い、どういう仕組みで商品が完成し、どう調理するかなどを見学しもらいながら理解を深めてもらうのもおもしろいですね。

裾野拡大に向けた土台作りを

日本製鋼所の梅田光秀氏
日本製鋼所の梅田光秀氏

…現状の大豆ミートは踊り場的な状況ですが、将来性についてどう考えていますか。

マルコメ 現状では定着までに至っていないため、教育や外食展開等による土台づくりにより、裾野をどう広げてゆくかが課題でしょうね。古くは増量剤的な役割により大豆たんぱくが使われてきたが、今は健康志向に目的が変わっています。ヨーロッパでは植物性の食品にミートやミルクの言葉を使うことを禁止され、世界的にはスーパープロセスフード(超加工食品)への懸念が強まり、次世代のプラントベースフードとして、シンプルな原料を用いて、できるだけ加工しない食品が出始めてきています。

世界の潮流とは別だが、日本には大豆の歴史があるが、協会では大豆以外の植物性の豆を使った食品も大枠として捉えて行けばいいと思います。

JSW 大豆ミートの将来性を考えた場合、どこをターゲットにするかも重要でしょうね。ヘルシーフードとしての認識はあるので、ターゲットをどこに置くか。例えばアスリート向けなどにターゲットを決めれば新たな活路が開けるのではないでしょうか。

…「大豆ミート」という名称をどう思いますか。

マルコメ 名称は重要ですね。「ほぼカニ」や「カニカマ」が世界的に拡がっている中、次世代に向け、「大豆ミート」もネーミングのあり方も検討すべきでしょうね。これらを協会会員が共通課題として認識し、シナジーが生み出せれば、「共創」としての新たな価値が生まれるのではないでしょうか。

JSW 新しい名称も必要かと思いますが、それをどうPRしてゆくかでしょうね。しかもスピード感をもって。

…最後にひとこと。

JSW 当社は機械メーカーであり、大豆ミートの味までには踏み込めません。機械を通して食感や歯ごたえをどう再現するための開発を進めています。条件をインプットすればシミュレーションができるソフトも保有しており、今後は大豆ミート業界の発展のために貢献したいと思っています。

マルコメ 大豆ミート協会が設立されて3年経ちますが、食品メーカーと機械メーカーとの情報交換の場が少ない印象をもっています。展示会等で両者が揃って情報共有すれば、新たな展開も生まれるのではないでしょうか。ゆくゆくはテストができるラボ、サンドボックスのような場ができればおもしろいでしょうね。