政府は食料・農業・農村基本法の改正案を閣議決定し、このほど国会に提出した。これは世界の食料需給変動、地球温暖化の進行、人口減少など諸情勢の変化に対応し、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的発展のための生産性向上を図るため基本理念を見直すもので、1999年の制定以来初の改正となる。
食品産業センターは、このほど開催した情報連絡会の中で、来賓として農水省の新事業・食品産業部の木村崇之企画グループ長を招き、新事業・食品産業部が所管している「食料安全保障の確保」「環境と調和のとれた食料システムの確立」「食品産業の健全な発展」「食料の持続的な供給に要する費用の考慮」についての改正案を解説してもらった。
このうち「環境と調和のとれた食料システムの確立」では、「従来は生産に附属する食品産業や消費者に重点が置かれたが、改正案では食料システムという概念を取り入れ、生産から加工、製造、流通、小売のサプライチェーン全体の安定供給を考えていこうというものになった」と指摘。「食品産業の健全な発展」では、「改正案は食料の持続的な供給に資する事業活動の促進や円滑な事業承継の促進、先端技術を活用した食品産業および関連産業に関する新たな事業創出の促進、海外における事業展開の促進などまさに食品産業が取り組むべき対応が加わった」と説明した。
改正案について食品産業センターの荒川隆理事長は、「基本法は非常に重要な法案であり、環境が変化する中で今の基本法では足らざる部分があると指摘してきた。とかく農水省は農林水産業を第一に考えるが、われわれの食品産業界も車の両輪だ。農産物ができても消費者に届けるデリバリー機能がなければ食品産業は成り立たない。改正案には食料システムというワードがしっかり書かれ、食品産業の持続的発展の確保における食料の価格形成でも条文に書かれている。一日も早く基本法が成立し、来年の基本計画に向けて施策の具体化を進め、改正案の二大テーマである『食品産業の持続的な発展』および『食料の合理的価格形成』で検討を深め、できれば来年の基本計画に合わせ、何らかの法的な裏付け、位置付けをつくってほしい」と要請した。