財務省の貿易統計によれば、アイスクリーム輸出額は22年度に64億5千万円となり、13年比で7倍以上にまで拡大している。コロナの規制緩和もあってアイスの海外展開は再び成長基調にある。一方で嗜好性や文化の違い、添加物の規制や冷凍物流面での課題もある。
赤城乳業は16年に海外初の子会社としてタイに設立したAKAGI ICE ASIA PACIFIC CO.,LTD(以下、AIAP)が現地OEMで生産し徐々に販売を拡大している。
タイに比べボリュームは小さいが、セブン-イレブンブランドのCVSを運営する統一企業グループの統一超商へ販売し、船便にて台湾への輸出も行う。日本人にとって「ガリガリ君」は手頃な価格なイメージだが、タイではやや高い価格帯で販売されている。
森永製菓は、直接輸出の場合、海外販売代理店に販売し、現地卸店や現地小売店を通して消費者に届ける。間接輸出の場合は国内輸出商社に販売し、同様の流れとなる。同社によれば、海外への輸送は国内流通に比べ、コンテナ積替えや海上輸送などのプロセスを要し、製造から店頭陳列までの時間が長期にわたることが多い。海外の現地物流システムは日本ほど即時的かつ効率的でないことが多く、需給管理が厳しい。
冷凍温度帯ならではの課題もある。時間・距離が長くなるサプライチェーンにおけるコストは大きくかさみ、損益面で事業性が確保しにくい(同社)という。
一方で、冷凍物流網の発達に期待を寄せる声もある。森永乳業は各国の代理店を通し、現地CVSやSMで販売している。「冷凍物流網が発達していくアジアではアイスクリームを食べる機会が増えると考えられ、ポテンシャルがある市場」(同社)と捉える。
規制や嗜好面での課題もある。中国、北米、タイ、香港へ輸出する丸永製菓は「輸出ベンダーへの国内渡しのため手間がかからない一方、国によって製法や添加物の規制が違う点で苦労している」(同社)と課題を示す。
ベトナムやドバイまで幅広く海外展開するフタバ食品も「国によって少しずつ食品添加物の規制や宗教上の問題などが異なる」とし、海外専用商品を開発するなど、各国に輸出可能な商品を選定している。
井村屋グループは、アジア全域にあずき商品を輸出しているほか、10年から米国でも製造販売を開始。
直接貿易の場合、井村屋製造の商品を井村屋グループが販売(輸出手続き)し、海上輸送にて海外輸入卸売業者、小売店へと渡る。間接貿易(井村屋グループにとって国内取引)の場合、井村屋製造の商品を井村屋グループが販売し、国内輸出商社による輸出手続きを経て、海上輸送にて海外輸入卸売業者、小売店へと渡る。「いずれの場合も冷菓・冷凍食品を扱うため、コールドチェーンが確立されたパートナーを選定している」(同社)。
日本では和菓子で馴染みのある小豆だが、欧米では小豆ではなく大豆を主食として食べるシーンが多い。「文化が違うなか四苦八苦して説明をしながら理解を得ている。一気にとはいかないが、あずき文化を徐々に広げていきたい」と展望している。