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逆光線(コラム)現場を支える矜持

現場を支える矜持

火山の噴火予知を研究していた科学者が予知に失敗した。だが、地元の人々からの信頼が揺らぐことはなかった。なぜか。彼が盆も正月も休みなく、毎日火口を見に行っていたのを人々が知っていたからだ。

▼哲学者・鷲田清一氏の「都市と野生の思考」に載っていた逸話である。「彼は自分のために自分の知性を決して使ってはいない」。それを「科学者の矜持」と表現する。

▼現在、多くの企業を悩ます物流費を抑えるには、配送頻度の見直しが避けられない。しかし、小規模の病院や施設が多くの在庫を抱えるのは難しい。そこに日々食材を届けるのは地元の卸業者だ。毎日来るので職員よりも冷蔵庫の中身を熟知している。うっかり注文を忘れてたとしても、翌日にはきちんと持ってきてくれる。

▼鷲田氏は「かつては経済人にも矜持があった」と、新紙幣で話題の渋沢栄一を引き合いに出す。自社や個人の利益のためではなく、国のために行動したと評する。新しい元号がスタートした今、こうした経済人の矜持がどれほど保たれているかは分からない。だが、多くの現場は矜持ある人々によって支えられている。

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