明治の八尾文二郎社長は次の100年を見据え、価値を創り続ける経営を重視する。「既存ブランド、過去のヒット商品は、次の成長のための礎。これを守るだけでは会社は絶対に成長しない。『先人がいい商品を作ってくれた』と50年後に未来の社員が喜んでくれる商品を創り出すことが大切だ」と社内で伝え続けてきた。
価値創造の肝は、提供価値と価格とのバランスのとり方。社長就任以降は既存品のリニューアルや新商品開発を加速し、価格以上の価値を提供した。その象徴の一つが、特許製法「生ねり製法」を活用した「生のとき しっとりミルク」だ。生チョコレートのような食感と常温流通を成立させた新領域の商品としてヒットし、業務用として和菓子への応用など新たな領域への展開も視野に入ってきている。

一方、乳製品では乳酸菌研究で得た知見の蓄積を活用した商品開発を進めている。「明治 ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト」は、ヘルスクレームを前面に出した商品名と毎日おいしく続けられる味わいで市場から高評価を得た。プロテインと乳酸菌を組み合わせた「ザバス BIOPRO ヨーグルト味」は常温保存可能で持ち運べる利便性が特徴。「ヨーグルトはチルドという常識が変わりつつある。今の時代にお客様が求める価値を見極め、常温市場も強化していきたい」と話す。
現場の声を経営につなぐ
人と組織の面でも変革を進める。明治製菓と明治乳業の経営統合から約17年。八尾社長は統合の成果を単なる規模拡大ではなく、「それぞれの強みを高め合うこと」と位置付ける。「シナジーとは単に事業を混ぜることではない。菓子や乳それぞれの強みを取り入れ価値を高め合うこと」と述べ、部門を越えて会社全体で同じ方向を向き、力を発揮できる組織づくりを進めている。
重視するのが現場との対話だ。就任以降、全国の事業所を訪問し、タウンホールミーティングなどを通じて社員と直接向き合っている。「社員の『会社を良くしよう、現場を良くしよう』という気持ちがものすごく強い。そこをどう経営としてつなげていくかも私の仕事」。生産、物流、営業など各部門がそれぞれの役割を果たすだけでなく、事業全体を見渡しながら連携できる体制づくりを推進している。
強みを掛け合わせ成長加速
乳と菓子、それぞれが培ってきた強みを生かす取り組みは商品開発にも広がる。その一例がグミ市場での新たな価値提案だ。「果汁グミ」で長年市場をけん引してきたが、近年その競争環境は激化。「同じことを追いかけるのではなく、明治らしい価値をどう付加できるかが重要」とし、乳酸菌や機能性素材など明治の強みを生かした新たな提案も検討していく。
海外展開も成長戦略の柱の一つ。現在1割弱の海外売上高比率を将来的には5割程度へ引き上げたい。M&Aや合弁も考慮しながら成長を加速させる。タイなど東南アジア市場では乳製品、北米市場では「HELLO PANDA」など菓子商品と、エリア毎の強みを生かしながら、「どこへ行っても『meiji』が通じる会社にする」ことも八尾社長の思いの一つだ。
「今の若い社員たちに、昔の大先輩が作った商品をそのままバトンとして渡すだけではいけない。今作ったものを、50年先の後輩たちに『あの時、いいものを作ってくれた』と言ってもらえるようにしたい」と八尾社長は力を込める。国内で培ってきた技術やブランドを世界へ広げ、次の世代がさらに成長できる会社を目指す。明治は商品、人、組織の変革を通じ、次の100年に向けた価値創造を進めている。
