飲料系酒類メルシャンが挑むネイチャー...

メルシャンが挑むネイチャー・ポジティブ㊦ 自然と共生するブドウ栽培 草原よみがえり生態系が復活

 生物多様性の回復を目指すネイチャー・ポジティブの推進へ、国内ヴィンヤード(ブドウ畑)での取り組みに力を入れるワイン大手のメルシャン。

 近年の気候変動を受けて、同社が管理する畑としては標高が最も高い800~850mの土地に開墾された「天狗沢ヴィンヤード」(山梨県甲州市)でも、新たな挑戦が行われている。

 雑木林として放置されていた場所を、17年から垣根栽培のブドウ畑に転換。スペイン地方で多く栽培されている品種「テンプラニーリョ」「アルバリーニョ」の生産を18年から開始した。温暖なスペインの産地で培われた、高温環境下でも成熟しやすい特性を持つ両品種は比較的早いシーズンに収穫が可能だ。これらを使用したワインを、今年4月からメルシャン直営ECショップで限定発売している。

4月から限定発売した2品
4月から限定発売した2品

 ここでも取り入れられているのが、自然に生える野草とともにブドウを育てる「草生栽培」だ。草が根を張り土壌の流出が抑えられるほか、ブドウと水分や肥料分を分け合うことで過湿や養分過多を防ぎ、雨が降っても土がぬかるむことなく作業性を保てるなどのメリットがある。

 周辺には野生のシカが多く生息する天狗沢ヴィンヤード。獣害防止のため周囲に張り巡らされた柵は、生物多様性の確保にも役立っている。シカによる食害で繁殖が抑制され貧弱化していた植生が回復するとともに、希少な昆虫もみられるようになった。

 こうした野生の植物と共生した栽培によって、約3.7haの敷地内ではこれまでにススキ、チガヤなどを含む植物111種、ウラギンスジヒョウモン、ミドリヒョウモンなどのチョウ類35種を確認。良質な草原を示す指標とされるネコハギやチドメグサといった植物もみられる。

地球にポジティブなインパクトを

山の中腹に開墾した天狗沢ヴィンヤード
山の中腹に開墾した天狗沢ヴィンヤード

 天狗沢ヴィンヤードも、今年3月に環境省によって自然共生サイトに認定。同社の国産ワインブランド「シャトー・メルシャン」としては、鞠子(長野県)、城の平(山梨県)の各ヴィンヤードに続く3例目だ。

 メルシャンでは14年から始まった農研機構との共同研究を通して、垣根栽培・草生栽培のブドウ畑が「草原」を回復し、生物多様性の向上にプラスの影響を与えていることを確認した。単位面積当たりに生息する絶滅危惧種が非常に多い草原は、現在は国土の1%以下しかない。その回復は貴重だ。

 地球にポジティブなインパクトを起こす経営を目指すキリングループの環境ビジョンのもと、メルシャンでは今年から「自然のめぐみを、幸せにかえてゆく。」との企業パーパスを設定。この取り組みを推進するための枠組みとして、国際認証「B Corp」を数年以内に取得する方針を掲げている。

 「お客様の価値観も変わり、地球によいことをしている製品を買いたいという意識が高まっている。CSV経営の必要性が増すなか、価値を作ってシェアしていく経営に取り組みたい」(シャトー・メルシャン事業本部長兼ゼネラル・マネージャー 小林弘憲氏)。

 キリングループでは、シャトー・メルシャンのヴィンヤードのような自社管理エリアで培ったノウハウを起点に、その取り組みをバリューチェーン全体へと拡大。ネイチャー・ポジティブの実現に向け、ステークホルダーとの協業を進める。(おわり)

関連記事

インタビュー特集