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松谷化学工業 執行役員研究所長 勝田康夫氏 アルロース採用が加速 25年度は前年比160%成長

 希少糖「アルロース」の市場拡大が続いている。松谷化学工業では、2025年度の販売が前年比160%と大幅に伸長し、採用も着実に増加している。研究面では、機能性表示食品として認められている血糖値上昇抑制や脂肪燃焼効果に加え、インスリン分泌を促進するホルモン・GLP-1を介した新たな機能解明が進む。アルロース市場の現状と今後の展望について、同社執行役員研究所長の勝田康夫氏に聞いた。

440品目へ広がる採用実績

――アルロースの採用状況についてお聞かせください。

勝田 採用実績は着実に拡大している。日本希少糖学会の集計では、今年3月時点で157社440品目に採用された。機能性表示食品は6月4日時点で37品目が公表されており、撤回分17件を含めると累計54件の届出実績となる。

――大手企業での採用も進んでいるそうですね。

勝田 大手飲料メーカーでは脂肪燃焼を訴求した飲料が機能性表示食品として受理され、近く発売予定だ。また大手乳業メーカーのヨーグルトドリンクでも複数の商品が受理されており、フレーバー展開も期待している。特にヨーグルト分野では使用量が多く、コンビニや量販店で広く販売されている。

――貴社の販売実績はいかがですか。

勝田 25年度は前年比160%と大きく伸長した。今年度も好調に推移しており、市場全体の成長を実感している。

血糖・脂肪管理に加え新たな研究領域も

――研究開発面での新しい成果について教えてください。

勝田 3月には専門誌「食品と開発」に論文を寄稿した。アルロースがGLP-1分泌を促進する素材として有用であることを整理した内容だ。GLP-1は食欲や血糖値の調節に関わるホルモンとして知られるが、近年は脳機能との関係も注目されている。

アルロースによって分泌されたGLP-1が、脳内でオキシトシンやバソプレシンの分泌を促し、自閉症スペクトラム障害の改善につながる可能性を示した研究成果も紹介した。今後さらなる検証は必要だが、新たな可能性として注目されている。

――GLP-1関連では医薬品との比較も話題になっています。

勝田 関東医科学研究所との共同研究では、GLP-1受容体作動薬セマグルチドとアルロースを比較した。ラットの過食モデルでは両者とも体重減少効果を示したが、投与中止後のリバウンドはアルロースの方が小さい傾向がみられた(※論文1)。

 また京都府立大学との研究では、高血糖改善の新たなメカニズムも明らかになった。アルロース摂取により分泌されたGLP-1とインスリンが協調し、迷走神経を介して脳へ情報を伝達することで、少量のインスリンでも効率よく血糖値を下げられる状態が作られることが分かってきた(※論文2)

――一般消費者への情報発信にも力を入れているそうですね。

勝田 アルロースの認知向上は重要なテーマだ。ゴールドジムとの取り組みは今年で3年目となり、健康意識の高い層への浸透が進んでいる。

 また4月末には香川大学の国際希少糖研究教育機構設立10周年を記念した市民向けセミナーが開催され、約100人が参加した。食品だけでなく農業、医薬、工業分野を含めた最新研究を紹介し、希少糖への理解を深めてもらう機会となった。さらに、国際総合科学誌「Nature」の記事世界配信を記念した取り組みも行い、アルロースが糖尿病など社会課題の解決に貢献する素材であることを発信している。

――食品以外への応用も進んでいるとか。

勝田 農業や工業、畜産分野で研究が進んでいる。農業では稲の倒伏防止、畜産では鶏の産卵期間延長や卵サイズ均一化の研究が進行中だ。工業分野ではコンクリートの凝結調整剤としての利用や六価クロム流出抑制効果も確認されている。

認知向上とコスト低減でさらなる市場拡大へ

――海外展開の状況はいかがでしょうか。

勝田 現在アルロースは20カ国以上で許認可を取得している。当社把握では17カ国だが、他社情報を含めると23~24カ国に広がっている。最近ではタイでも認可されたとの情報があり、アジア市場での拡大に期待している。

――今後の課題と展望をお聞かせください。

勝田 一つは「糖類表示からの除外」。希少糖や糖アルコールはカロリーがほとんどないにもかかわらず、砂糖と同じ分類にされている。消化可能な糖とできない糖の区別がなく、一般消費者に分かりにくい。4月に消費者庁担当官との面談を行ったが、すぐの進展は難しい印象だった。ただ多くの食品メーカーから賛同を得ており、消費者が正しく商品を選択できる環境整備に向けて働きかけを続ける。今後は他省庁との連携も視野に入れたい。

 もう一つはコスト低減だ。高力価酵素の導入による生産コスト削減を進めており、3月には酵素が食品添加物として認可された。メキシコ工場への導入に加え、アジアでの委託生産も来年度の稼働を目指している。

 アルロースの認知向上、価格低減、そして表示制度の改善。この3つを同時に進めることで採用拡大を加速したい。市場はまだ成長途上にあり、今後も大きな可能性があると見ている。

※論文1D-Allulose Reduces Weight More Persistently than Oral Semaglutide While Both Equally Elevate Grip Strength in Diet-Induced Obese Mice(D-アルロースは経口セマグルチドよりも持続的に体重を減少させる一方、両者とも食事誘発性肥満マウスにおいて握力を同等に増加させる)

著者:Yermek Rakhat, Seiya Banno, Dauren Zhantleu, Shin Tsunekawa, Daisuke Yabe, Yutaka Seino, Yusaku Iwasaki, Toshihiko Yada
掲載誌:Nutrients. 2026;18(4):707. doi:10.3390/nu18040707

※論文2Gut-derived GLP-1 released by rare sugar D-allulose cooperates with insulin to activate left-sided vagal afferents and enhance insulin sensitivity(希少糖D-アルロースによる腸由来GLP-1放出は、インスリンと協働して左側の迷走感覚神経を活性化することで、インスリン感受性を増強する)
著者:Kento Ohbayashi, Mamoru Tanida, Chikara Abe, Hirotaka Ishihara, Wataru Omi, Naoto Kubota, Daniel J. Drucker, Toshihiko Yada, Yusaku Iwasaki

掲載誌:Diabetes. 2026. doi:10.2337/db25-1134

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