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トップニュース原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

原点は休憩中に見上げたキウイ 全国で食材発掘、生産者と企業つなぐ サッポロビールの地域創生事業

明治9年(1876年)、北海道で新たな産業を興すべく設立された「開拓使麦酒醸造所」をルーツとするサッポロビール。創業150周年を迎える今も、その“開拓”の精神は息づく。ビール会社としての枠にとらわれない発想力を武器に、事業領域拡張の最前線で奮闘する人物に迫った。

◇  ◇

一次産業を担う各地の生産者と企業のバイヤーをつなぎ、農林水産物の需要創出をサポートするサッポロビールの地域創生事業。その原点は、外食企業のコンサルティングを手がける部署で九州の拠点に配属されていた、一人の担当者のひらめきだった。

大分県の農村部を営業で回っていたある日、休憩しようと車を停めた平野武樹氏。ふと見上げると、完熟しておいしそうなキウイフルーツが実っている。だが、農園が営まれている様子はない。

かつてはきれいに管理されていた農地が、放棄されてしまっているのでは?と思った。

「生産現場の疲弊を目の当たりにし、サッポロとして何かのお役に立てないかと考えた。そのときに、地域産品のプロモーションに力を入れている自治体では、民間企業と連携しているケースが多いことを知った」。

地方自治体の公募事業を受託することで、生産者の販路拡大を支援するビジネスモデルを18年に発案。「すごく面白そうだから、実際にやってみよう」と上司からのゴーサインを得て取り組みがスタートした。

「こんな面白いものを作っているところがある」などの情報を口コミでキャッチしつつ、全国の生産者を訪ねひたすら飛び込む日々。

当初は「あやしい人間が来た」と自治体に問合せされることもあったというが「『外食と皆さんをおつなぎしたい』という思いを伝え続けることで、やがて信頼していただけるようになった。サッポロという企業ブランドの強さを感じた」。

最大の成功体験となったのが、福島県での農林水産物マッチング事業だ。

コロナ禍が続いていた22年、商談会のリアル開催が難しくなったのを機に、生産現場とバイヤーをオンラインでつなぐことを発案。パソコンやZoomを使えない生産者も多いなか、オンライン商談会の有効性を本気で説得。操作方法も一からレクチャーして回った。

その成果が、同県特産の「メイプルサーモン」の販路開拓。通常は廃棄される骨や内臓などの部位をなんとか商品化できないかと働きかけた結果、スープ用のだしとして採用したのがラーメンチェーンだった。今ではメディアでも多数取り上げられる東京・神楽坂の人気ラーメン店「サーモンnoodle3.0」の開業に結びついた。

「飲食店は新メニューの開発にあたって、店の客単価に食材の原価をどう合わせるかに頭を悩ませている。産地を回って多くの魅力的な食材を知っているわれわれが提供する価値に、バイヤーの皆さまから魅力を感じていただいているのだと思う」。

持続可能な一次産業づくりへ 国内外で販路開拓支える

福島県いわき市の水産品をアピールする平野武樹氏
福島県いわき市の水産品をアピールする平野武樹氏

福島県での大きな成功事例をつかんで弾みがつき、新規案件を次々と手がけるようになる。

「成果が出て嬉しかったのは、高知県の水産物の販路開拓。官民の連携により、約3年間で売上を倍増させることができた。単年度のイベントで終わらせるのではなく、継続展開できていることがわれわれの強みだ」。

自治体の公募事業で着実に実績を積み上げて信頼を勝ち取り、やがて生産者からは「来年度の事業もぜひサッポロさんに受託してほしい」と求められるようになる。

「現場の皆さんの後押しを得ながら、こうした取り組みをここまで泥臭くやっている企業は他にない」と自負する。

「ビールの営業担当が常に全国各地の拠点にいて、サッポロビールの顔が現場で見えることが、事業の在り方としてとても大事なこと。それに、地域の名前がついた大手ビール会社はうちだけ。麦芽やホップの協働契約栽培に力を入れている会社でもある。地域の生産者と同じ目線でものごとを考えられることが強みだ」。

いま地方の産地では、高齢化と担い手不足が社会問題化している。

「大手が進出して大量生産で効率化することはできても、たとえば完全無農薬や希少な品種など、食文化へのこだわりが薄れてしまう可能性がある。独自に差別化を図っている小規模農家が、自分たちの食材に価値をつけて持続可能な農業を営めるようにするために、ブランディングやバイヤーとの接点づくりのお手伝いをしたい」。

23年 には同社で異例の新規事業として独立した部門となったのに続き、昨年に「法人・地域創生統括部」が誕生した。現在は8人のメンバーで全国を奔走。会社からの期待は厚い。すでに全国の19自治体と契約し、いずれは全都道府県への進出を目指す。

さらに、海外販路の開拓も今後の大きなテーマだ。

「県産品の輸出拡大に力を入れている自治体は多い。海外に販路を持っている当社として、連携を図ることで世界でのファン拡大をサポートできればと考えている」。

現在は公募案件を専門に受託しているが、ゆくゆくは自治体との随意契約や民間からの相談にも対応したいと語る。

「ヱビスビール」のブランド価値にほれ込み、サッポロビールに入社した平野氏。外食企業のコンサルティング業務で磨いた知識と経験をもとに「入口から出口まで、相談するならサッポロビール」を掲げ、生産者の心強い味方として寄り添い続ける。

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