ペリージョンソン ホールディング(TEL03-5774-9510)は、ISO認証、ビジネスコンサルティング、教育・研修事業を通して顧客のサステナビリティ活動の普及に尽力。「関連するISO規格、国際イニシアティブについて一層の見識を深め、顧客の要望に的確に対応する」「法令や倫理に則り公正な事業活動を行い、顧客・取引先・従業員および地域社会との信頼関係を大切にするとともに相互に利益を共有し、社会的な責任の一翼を担う」など多彩な基本方針のもと、サステナブル社会の実現に向けた事業を展開している。認定マネージャー/食品安全プログラムマネージャー/審査員の海澤幸生氏に、FSSC22000(以下、FSSC)認証審査活動を中心に聞いた。
- インバウンドによる食品需要が伸びを示す一方、食品の海外輸出を目指す企業が増えています。これに伴い、食品安全のさらなる強化が求められています。この状況下、貴社のFSSC認証審査の動きはいかがですか。
海澤 おかげさまで、当社のFSSC認証はコンスタントに伸びており、本年第3クオーターの時点で290件を認証登録させていただいている。FSSC認証は飲料業界からスタートしているが、大手流通が広く取引先に認証取得を求め始めたことで、食品加工メーカーなどが取得を目指す傾向が年々顕著になり、認証件数の伸びにつながっている。
近年は食品輸出のための認証取得にシフトする傾向を見せ始めており、海外輸出に関する問い合わせを多くいただく当社では、米国だけではなくEU諸国への輸出に関する問い合わせも増えてきている。米国輸出の中では、フードサービス業の米国進出も伸長傾向にあり、そのサプライヤーが当社の認証取得を目指す動きも目立っている。その背景には、米国で施行されている「食品安全強化法」が、輸入業者による輸入食品の安全検証を義務付けている。といった状況もある。
また、農水省が食品輸出戦略をとっており、将来的には年間5兆円にまで伸ばしたいとの意向があり、輸出に対する補助金制度を設けている。これも追い風になっていると考える。
さらに、当社は、米国の法律で食品企業に義務付けられている「予防コントロール有資格者」「食品防御の有資格者」などを養成する食品安全管理教育のサービス提供を行っている。その関係で、米国輸出で求められる資格者養成と併せて、FSSCを取得される企業様も多い。
- FSSCはバージョン6.0への移行が完了し、来年には7.0発行の動きもあります。進化の激しいFSSC認証取得のメリットは。
海澤 FSSCは、当初は食品安全にフォーカスした規格であったが、最近は、食品産業が食品製造業者やサプライヤーに求める要求事項に変化してきた。つまり、食品安全は主軸であるが、「品質管理」や「環境」といった側面が加わっており、食品業界がいま必要としている「サステナビリティ」「ESG投資」など、持続可能な成長と社会的責任の実現といった大きな要素までも包括した規格になってきている。
また、大手流通などが“FSSC基準”として要求するケースが増え、そのすそ野が大きく広がってきており、FSSC認証取得がビジネス拡大の強力なツールになるのもメリットだ。
当社は、FSSCのほかにも、ISO22000、JFS-B規格の認証を行っており、食品製造業者のレベルに応じた審査サービスをご提供できる。従って、その中で徐々にステップアップした食品安全を構築していくことも可能なので、それもある意味でメリットといえる。
また、FSSC財団の「アデンダム」というFSSCの追加審査基準での、マクドナルドやコストコなどが求めるサプライヤー資格の審査サービスも行っており、その引き合いも多い。
- 国際的な認証機関である貴社のFSSC認証審査の特徴は。
海澤 FSSCの要求事項は多岐にわたるが、その適合性を審査させていただくのはもちろんのことそれだけではビジネスは成り立たないと考える。企業全体としての管理をより有効に機能させることが最重要であり、“形式的審査”ではなく、受審企業様ごとの業務プロセスに合わせて適合性を確認し、事業活動の“有効性”審査を行わせていただく。それによって、経営や工場運営の課題解決といったところまで踏み込み、審査を通じて改善していただくのが当社の特徴だ。
また、食品輸出を行う場合、輸出対象国の「衛生管理」「食品表示」「アレルゲン規制」など複雑な法規制を遵守する必要があるが、当社は、その観点からも審査ができる。審査員も米国をメインとする国際的な専門性を有する者を多数擁している。
当社は、審査を受けられるお客様と審査員のマッチングのためのコーディネーター専任チームを作っている。審査員にはさまざまな特徴があり、お客様にも審査を通じて達成したい目標がある。そのマッチングを間違えると、結果的に良質な審査にならない可能性がある。
そのため、専任のコーディネーターや営業チームが、お客様ごとの課題や、コスト負担を考慮した立地に極力近い審査員の派遣などにより、多様な観点からお客様とのコミュニケーション強化に努めている。
さらに、FSSCはバージョンアップが激しいので、情報を先取りし、変更点のポイントや取り組みの注意点などを、お客様に動画や資料で配信をしている。審査は年に1回であり、それだけではお客様に満足していただけないので、トータルで不安や懸念の解消にアプローチしていただけるよう、年間を通じてさまざまなお客様サービスが提供できるよう努めている。
- 食品業界へメッセージをお願いします。
海澤 日本は人口が減少してきており、国内で食品産業が成長し続けるには限界がある。そのため、収益のポートフォリオに海外輸出を入れていくことが重要になってくるだろう。その場合、輸出先はアジア圏、EU圏、米国などさまざまだが、やはり米国輸出が試金石になるはずだ。米国に輸出できる食品安全や企業の管理体制の基盤があれば、さまざまな輸出先で通用する食品安全基準を担保できる。
そのツールとして、日本においてFSSCは非常に優れた規格である。従って、当社はFSSC認証を通じてその要求事項だけでなく、その企業が目指す輸出の形をサポートしてゆく。審査を通じて“気づき”を示唆したり、改善を進めていただけるものと考えている。
さらに、日本の食品産業もDX化が進んできており、それに対する「情報セキュリティ」などIT管理も確立させないと、逆にDX化ゆえに生産性に強烈なダメージを与えることになる。当社は、ISO27001(情報マネジメントシステム)の認証審査も行っており、多角的な面から持続可能な食品産業の構築に取り組んでいってもらえる。
食品安全を取り巻く環境は年々大きな変化をみせており、「事業リスクは特定の分野に限られるものではない」と常に訴えている。当社は食品安全規格をベースに、「情報セキュリティ」「品質」さらには「持続可能な調達」の達成を妨げるリスク解消のツールを総合的に提案させていただける。FSSCを取得していることで期待し得る、企業の社会的信頼を高める仕組みづくりにもお力添えができるので、ぜひお役立て願いたい。

