食生活研究会は9月4日、都内で「第33回『食と健康』講演会」を開催した。
冒頭、正田修理事長があいさつ。「当財団では過去10年間で156件、1億4600万円の研究助成を行っており、今年度は17件、1600万円を支援している。本日は当財団が助成した研究の中から、国際農林水産産業研究センターの白鳥佐紀子先生による研究報告と、この講演会のために東京大学大学院の佐藤隆一郎特任教授に講演をお願いし、快くお引き受けいただいた。お越しいただいた皆さまと日頃から当財団の運営にご支援をいただいている諸先生には、心から御礼申し上げたい」と述べた。
白鳥氏は「世界の栄養・食料安全保障と食料需給における課題」をテーマに、アフリカの農村部で実施した調査結果などを披露。1日に3食を食べていないことや、主食に偏った食事内容で常に同じものを食べているなどの実態に触れた。
マダガスカル島の事例では、行動経済学的な観点からリスク回避や、未来より現在を重視する選好が栄養改善の妨げになっていることを指摘。現在志向の人は、将来の健康のために栄養価の高い食品に投資しにくいなどの実情を報告した。
佐藤氏はビタミンB1を発見した鈴木梅太郎元東京帝国大学教授や、グルタミン酸ナトリウムを発見した池田菊苗元東京帝国大学教授の偉業に触れ、明治時代から日本の栄養・食品科学研究が世界の最先端であったと話した。また85年に自身が論文発表したカゼインホスホペプチドによるミネラル吸収促進に関する研究についても触れ、95年にその論文を用いて市販化したトクホ飲料を紹介した。
佐藤氏は、動物実験の代替実験法としてヒトiPS細胞オルガノイドの利用について解説。ヒト小腸オルガノイドの培養コストが、WRNH細胞の培養上清などを用いることで従来の100分の1程度に削減できると報告した。