【消費の深層】9月も売れるそうめん 残暑で棚替え時期に再考の余地ありか

夏の定番である「そうめん」だが、残暑の影響で9月の売上が伸びていることや単身者の利用シーン拡大などがリサーチ・アンド・イノベーションの分析で明らかとなった。

調査には毎月約30万人が利用するスマートフォン向けアプリ「CODE(コード)」の購買データを使用。以下、同社の西村まどかさんが寄稿する。

暦の上では秋に入る9月だが、依然として残暑がニュースになるなど、かつてのように涼しさを感じる季節ではなくなりつつある。
秋の到来が遅れることで食卓も変化しているのだろうか。今回は夏の定番である「そうめん」を例に、残暑が購買行動にどのような影響を与えているのかについて調べた。

気温上昇と売上伸長が連動
気温上昇と売上伸長が連動

近年、全国的に9月の平均気温が上昇する中で、そうめんの売上高も増えていた(図1)。夏の定番メニューが秋口の食卓に登場するのも当たり前の時代になりつつあるようだ。

では、どのような人がよりそうめんを買うようになったのだろうか。これを調べてみたい。全国で見ると、地域ごとの気温の変化の影響を受けてしまうため、2022年から2024年にかけて平均気温の上昇率が112%、そうめんの売上伸長率が150%とどちらも大きく上昇している甲信越(長野県・新潟県・山梨県)を事例として分析した。 (図2)

まず、家族人数別に購入金額の伸長率を比較した(図3)。気温の上昇に合わせて特に伸長していたのは単身者だった。次に同居している子どもの人数別に比較した(図4)。
伸び率が大きかったのは同居している子どもがいない人で、187%と突出して高かった。

単身者の利用拡大
単身者の利用拡大

このように、一人で食事を済ませることの多い単身者にとって、暑い日の食事の選択肢としてそうめんの需要が拡大していると言えそうだ。

そうめんについて単身者の口コミを見てみると「一人暮らしを始めてからは茹で時間が短く調理しやすい」、「手軽に食べられて美味しい」、「お腹が空いた時に手軽に食べれるのが嬉しい」のように、そうめんの手軽さとおいしさが支持されている様子がうかがえる。

手軽にご飯を済ませがちな単身者にとって、ひとり分だけを簡単に調理でき、涼しさも感じられる点が、購入の後押しになったと考えられる。

夏の定番商品である「そうめん」は、9月の長引く残暑で単身者を中心に売上が伸びている。今回はそうめんに注目をしたが、夏の食卓が秋口にも登場する時代になりつつあるのではないだろうか。

食品業界としては、秋冬商品への棚替え時期のMDをどの様にするべきか再考の余地がありそうだ。