あえて割った米菓「技のこだ割り」に脚光 圧倒的な濃厚さが価値 亀田製菓

 製造工程で意図せずに割れたり欠けたりした規格外の米菓は「久助(きゅうすけ)」と呼ばれ廉価販売されることが多い。

 これに対して、製造工程で米菓を意図して割り、割ることに価値を見出し付加価値商品として展開しているのが亀田製菓の米菓ブランド「技のこだ割り」。

 2024年8月、パッケージをリニューアルするなどして価値伝達を強化したところ、ビールなどのおつまみ需要を獲得して脚光を浴びている。

 ブランドの誕生は2008年。開発には5年の歳月を要した。

 7月24日、取材に応じた佐藤唯国内米菓マーケティング部米菓スナック第3グループ主任は「当時の技術者が市場調査で訪れたある路面店で、割れた煎餅の断面に醤油をしみ込ませた商品を発見した。それを実際に食べてみたところ、今までの煎餅にはない圧倒的な濃厚さが感じられたことから商品化の発想に至った」と語る。

 開発に立ちはだかったのが、“あえて割る”という技術的な課題と、あえて割った米菓の断面に特製だれをしみ込ませることで打ち出される濃厚さの価値伝達の難しさだった。

 あえて割る技術については企業秘密となる。「割り方を誤ると粉々になってしまったり、二等分になったり、ちょうどいいひと口サイズに割るために物凄くこだわり試行錯誤した」という。

 発売開始から9年後の2017年には、割り方を改良。大きさは不揃いながらも、割れる大きさをより細かくして、全体的により食べやすさを向上させた。

 濃厚さの価値伝達も試行錯誤を重ねた。
 「前身となる商品を『しみ込み焼』など何度か別の商品名で展開していたが、お客様にわかりにくく、なかなか買っていただけなかった」と振り返る。

 「技のこだ割り」のブランド名は、このような過程を経て編み出され2008年に「濃厚醤油」が発売開始された。

 「職人があえて割る世界観を打ち出した。あえて割る製法を“技”というふうに捉えて、“割り”には、技のこだわりの意味を重ねた」と述べる。

 パッケージデザインは段階的に磨きをかける。

 2023年には、中身が見える透明パッケージからアルミパッケージに変更。「技のこだ割り」のブランド名も徐々に大きく目立たせていった。

売場に並ぶ「技のこだ割り」の旨辛とうがらし」
売場に並ぶ「技のこだ割り」の旨辛とうがらし」

 ラインアップは2014年に「旨辛とうがらし」、2024年に「濃厚チーズ」が加わり、現在3品体制。さらにコンビニ限定「濃厚たまり醤油」を加えた4品を定番と位置付け、季節に応じて期間限定品を投入している。

 昨年8月以降、販売が上向く中、市場では“あえて割った米菓”が増加傾向にあるという。

 「NB・PBともに競合品は増えており、その中には久助の延長線上と思われる商品も多い。『技のこだ割り』は、濃厚さはもちろんのこと、特製だれの味わいや食感にもこだわっている。『技のこだ割り』にしか味わえない満足感・充実感がある」と自信をのぞかせる。