高野豆腐に追い風 「元祖プラントベースフード」に注目高まる 旭松食品 木下博隆社長

伝統食品の高野豆腐は、低糖質で高たんぱく、保存に優れたスーパーフード。血糖値の上昇抑制やコレステロール値の改善など、その健康機能性の高さに注目が集まっている。海外では近年プラントベースフード(PBF)が広がり、植物性たんぱく源としての高野豆腐の研究、活用が進む。木下博隆・旭松食品社長(全国凍豆腐工業協同組合連合会会長)に、国内外の市場拡大の可能性について聞いた。

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――国内の販売状況について。

木下 インフレになって価格転嫁をしないといけない状況が数年間続き、21、22、23年と3回連続で価格改定をした。昨年6月からの3回目の値上げは実質9月末に終わり、これまでできてないところを含めてようやく揃った。いまのところ次の値上げ予定はないが、原料大豆は為替の影響が大きく、物流費等高騰の場合によってはもう一段階上げる必要がある。また他の業界同様に売上は上がったが、数量は落ちている。そのなかで昨年末は数量も前年を超えた。コロナが落ち着いて初の年末となり、年末商戦と連動して販促を強化した効果かもしれないが、引き続き動向を注視したい。

――輸出を強化されてますが、海外市場をどうみていますか。

木下 EU中心にPBFにシフトしつつある。追い風市場にあり将来的に明るいと感じる。特に環境活動家のグレタさん世代の若者は、ビーガンやベジタリアンでなくても環境への意識が高い。親世代も子どものためにそのような買い物をする傾向があり、PBF商品の売場が拡大している。EU圏では日本の食文化に関心が高く、高野豆腐が肉を食べない時の精進料理として発達してきた歴史や、栄養・機能面で高いという点も合わせて訴求に力を入れたい。

――食品研究開発拠点フードバレーに参画して活動中ですが、成果は。

木下 ワーゲニンゲン大学と高野豆腐の機能性について研究を進めている。22年12月にその研究成果を発表。昨年からは管理栄養士と一緒に病院食のメニュー開発を進めている。日本のような含め煮などではなく、粉末にしてパン生地にするなど現地の主菜や副菜に合わせて模索中。オランダでは近年、入院食が見直されていてPBFへの関心が高い。政府も国民の摂取たんぱく質の割合を、動物性と植物性の6対4から、将来的に4対6に変える考え。米国に次ぐ農業国でまたフードテック発信地。オランダからEU全域に広がる素地がある。

――日本を含めて、将来的に浸透する可能性は。

木下 世界人口が増加するなか、PBFでタンパク質摂取という考えが定着してきたので、しっかりとこの流れに乗っていきたい。逆輸入ではないが、日本でも徐々に関心が高くなってきている。SDGsにしてもPBFにしても、EUで標準化されて日本に波が来ているが、その内容は昔から日本が受け継いできたこと。定着する土台が十分にあると考える。

――高野豆腐の機能性の研究は続きますか。

木下 徳島大学医学部との共同研究では、高野豆腐のタンパク質が筋肉維持に役立つ可能性が示された。高齢者の寝たきりなどの要因で筋肉質は急激に減少する。研究では大豆たんぱく質にはこれを防止する特殊な効果があり、高野豆腐中のタンパク質にも同等の効果が期待されることが分かった。高齢者のフレイル予防のための食事として、さらには宇宙食として、高野豆腐が役立つ可能性は広がる。今後はこの研究を進めるとともに、効果的な摂取方法や食べ方、メニュー提案を進めたい。