ジンに目覚めた日本人 市場倍増へ 野望に燃えるサントリー 「ROKU」「翠」国産2本柱

スピリッツのなかでも、日本人の多くになじみがなかったジン。古くから親しまれてきた欧米では、マティーニをはじめカクテルベースとしてもポピュラーだ。だが各種ボタニカルに由来する独特のフレーバーも敬遠されてか、日本の一般的な飲酒シーンには根付いてこなかった。ここにきて、ブレイクスルーの兆しが見えている。けん引するのはサントリーだ。

「昨年の国内ジン市場は6年前の1.9倍。国産ジンの構成比は26%から65%に高まり、もはや単なる外国のお酒ではなくなっている」。

2月7日に行われたサントリージン戦略説明会で、塚原大輔執行役員が力を込めた。

古くは1936年発売の「ヘルメスドライジン」に始まる同社の国産ジン。近年、日本の食卓にもなじみやすい和素材を使った「ROKU〈六〉」(17年)、「翠(SUI)」(20年)の投入が起爆剤となり、国内市場では国産のボリュームが輸入品を大きく上回るまでに急成長した。

「グローバルでは、ジンはウイスキーの(市場規模に対して)約16%だが、日本ではまだ4%。今後さらに伸びると確信している」(塚原氏)。

桜、煎茶など和の6素材を使った高価格帯ジン「ROKU」はとりわけ海外販売が急伸し、世界売上3位のグローバルブランドへと躍進した。

今年は「旬を味わえる贅沢なジン」をコンセプトに、国内マーケティングも強化。WEB動画や体験イベント、料飲店向けの販売強化に加え、初の限定品「SAKURA BLOOM EDITION」を20日からEC・業務用で発売。桜餅のような、桜の上品で甘い香りに仕上げた。

一方、手ごろな価格帯の「翠」は、ソーダ割りによる食中酒提案を継続する。飲食店向けにも、ビールの樽生アドバイザーと連携した飲用時品質向上の取り組みを強化。バーで飲むなじみのない酒のイメージを打ち破り、日常への定着を図る。

平野紫耀さんを起用「翠」(サントリー) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
平野紫耀さんを起用「翠」(サントリー)

新CMキャラクターに、人気タレントの平野紫耀さんを起用。「いと清々し。翠ジンソーダ」のメッセージで、柚子をはじめとした和素材の爽やかな味わいを訴求。手軽に楽しめるRTD「翠ジンソーダ缶」も、より爽やかな味とデザインにリニューアルする。

生産能力増強と品質向上へ、ジンを製造する大阪工場で55億円を設備投資。今年の販売計画は「ROKU」が前年比173%、「翠」133%、サントリージン合計135%と野心的だ。30年の国内ジン市場を、現在の倍以上となる450億円とすることを目指す。

「簡単な挑戦ではないが、創業者・鳥井信治郎の『やってみなはれ』精神でジンの魅力を知っていただき、ファンになっていただく。この挑戦に邁進したい」。塚原氏は意気込みを語った。

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