創業150周年を迎えるサッポロビール。事業持株会社として新たなスタートを切った7月、食品業界で豊富な経験を持つ敏腕マーケターの中村洋一氏を執行役員マーケティング本部長に迎えた。10月からのビール類酒税一本化を控え風雲急を告げる業界にあって、サッポロを次なる成長へ導く一手とは。
1993年に入社した中埜酢店(現mizkan)からキャリアをスタート。同社卸売部門を担うナカノがサッポロビールの特約店だった縁から、社内の飲み会に登場するビールは必ずサッポロ。以来33年間、熱烈なサッポロファンだと語る。
06年からは日本コカ・コーラでスポーツ飲料などのマーケティングに関わった後、「ハルメク」の情報誌編集長を経て18年に日清食品ホールディングス入社。明星食品への出向や「日清のどん兵衛」のブランド統括責任者を経験し、ビヨンドフード事業部では「完全メシ」の開発にも携わった。
「それぞれの会社で十年単位で強みを身に着け、次の会社で生かす。自分の中で技や引き出しを増やしてきた。プロパーだけ、外資だけなどよりは、マーケティングの多様性を持っていることが強みだと思う」。
日清を辞めるつもりはなかったというが、サッポロの時松浩社長らと腹を割って話すうちに、次第に気持ちを固めた。
「時松社長はロジカルな面と、心の熱さや柔軟性が両立した経営者。マーケターはロジカルとクリエイティブの両利きなければならないと思っていて、こういう方の下でなら力を発揮できると感じた」。
サッポロ入社以前、酒類メーカーとの会合もたびたび経験。

「どこも自社の商品を偏愛していて、よそのビールは絶対に飲まない。とくにサッポロの社員は、自分たちの会社とビールへの愛が半端ない。偏愛どころか、ちょっと狂気の域ではと感じるほど。実際入社してみると、それは予想以上だった」。
競合他社にはない、サッポロの強みとは?
「黒ラベルもヱビスも、絶好調の赤星(サッポロラガービール)も、昔から中味やパッケージデザインがほとんど変わっていない。モノとしての商品と消費者との関係だけを考えればデザインを新しくしたりする必要が出てくるが、そこはあまりやらない。われわれは単にモノを売っているのではなく、それぞれのブランドがお客様の人生にどれだけプラスになるか、そこに寄り添う。サッポロビールの役割と、お客様がつながっているのが強い点ではないか」。
「サッポロらしい戦略」こそ
酒類メーカーは初めてだが、マーケティングに臨む姿勢はどの業界でも変わらないと話す。
「ミツカンのお酢を買う方は、アクエリアスだって黒ラベルだって買う。業界は違っても、お客様は一緒。大事なのは、そのお客様を常に見続けることではないか。ただ他の加工食品と違う点があるとすれば、酒税がかかること。そこを意識しながら、お客様の満足される価値と価格のバランスを考えたい」。
どこの企業でも、入社後に求められるのは「改革してほしい」ということだった。
「改革とはAをBにひっくり返すことだと思われがちだが、ロングセラーや長寿企業には、それだけ愛してくださるお客様が多くいる。ひっくり返すのではなく、愛されていながらも時代に合っていないコミュニケーションを変える。Aに対してBCD…といろんな引き出しから足していく。そんな変革に挑戦する」。
酒類業界で4番手のサッポロ。いま必要な戦略とは?
「正しい戦略を実行しようとしても、上位と体格差が開いているなかで、単に正しい戦略なら2位や3位にもできてしまう。むしろサッポロらしさがプラスされたことをするため、正しさだけではなく強さが必要だ」とみる。
「正しさはロジカルから生まれるが、強さはクリエイティブから。規模の経済で勝つのではなく、価値を創る会社であり続ける。そのためのマーケティングをしたい」。
