日本生活協同組合連合会(日本生協連)はこのほど、2030年ビジョンに向けた第2次(23~25年度)中期方針を示した。23~25年度までを「(人口減少など様々な)社会構造の変化を迎える前において、改革のラストチャンスの3年間」と位置付け、売上の3分の2を占める宅配事業の収益性向上と課題のある若年層獲得に一層注力する。
中期方針では、宅配リノベーション、店舗の競争力強化、商品力強化、事業連帯リ・デザインを柱に、構造改革に向けた足場を強化する。利用率の高い高齢者層の将来を見据えた福祉事業の強化と、デジタルを活用した若年層の利用促進を図る。このほど開いた事業説明会で藤井喜継代表理事事業担当専務は、宅配事業の利益率低下、組合員の高齢化、DX推進に係る「2025年の崖」と呼ばれる課題を挙げたうえで、今年度の具体的な方針を示した。
EDIと呼ばれる流通に係る受発注情報のやりとりは、新たにBMS(流通ビジネスメッセージ標準)に切り替え共同運用。すでに東北から開始しており今後は近畿・九州エリアに拡大する。
若年層との接点強化として昨年、東北・関東甲信越・東海エリアで実証実験した「TRY CO・OP」の実施エリアを近畿・中国まで拡大し冷凍食品など手頃な商品を訴求する。SNSやインフルエンサーを活用しトライアル促進を図る。
22年度の全国65主要地域の供給高は前年比1.3%減(3兆233億円)。宅配は0.9%減(2兆945億円)、店舗は0.7%減(9千175億円)とともに前年を割ったが、コロナ禍前の19年比では宅配が13.7%増、店舗が2.2%増だった。
22年度は、価格上昇のなか組合員の利用点数が減少したことを受け1~3月に「くらし応援キャンペーン」を実施。全国の生協がお値打ち価格の商品約1千77品目を展開した結果、対象商品の供給高は前年比で20%近く伸長した。なかでも牛乳やちくわ、レトルトカレー、キャノーラ油など日常商品や保存商品の利用が多く、全国一斉というインパクトもあって売場が活性化した。
コープ商品事業では、前年を0.6ポイント上回り過去最高を達成した。なかでもエシカル消費対応商品の総供給高が11%増(2千250億円)、エコマークは77%増、FSC認証マーク付き商品も20%増と伸ばし、共通ロゴでシリーズ化した「コープサステナブル」、手軽にタンパク質が摂れたり、脂質やカロリーをおいしく減らせる「ヘルシーコープ」もラインアップを充実させた。物価高騰の中でも「きらきらステップ」やアレルギー対応商品、国産素材マークを付けた商品が伸長している。
土屋敏夫代表理事会長は「食品・エネルギーを中心に急激な価格上昇が止まらず、インフレが家計を大きく圧迫している。事業経営はこれまでにないコスト増で厳しさを増している」とし、生活防衛への取り組み、事業革新、システム化を含めた強靭化に弛まなく取り組む姿勢を示した。第2次中期方針の初年度となる23年度は「急速に変化する社会情勢を捉え、事業構造の改革スピードを上げ、SDGs実現に向けても飛躍の一歩を踏み出す」と語った。