低迷する果汁飲料市場で「トロピカーナ」栄養素入り低果汁の勝算 「休憩に甘いものを飲みたいが健康も気になる」ニーズに着目

 キリンビバレッジは低迷する果汁飲料市場で「トロピカーナ」の栄養素入り低果汁に勝算を見込む。

 栄養素入り低果汁の注力アイテムは「エッセンシャルズ」シリーズと「W(ダブル)オレンジブレンド」(以下、W)で、ともに同社が将来の成長の柱と位置付けるヘルスサイエンス領域の一翼を担う。

 取材に応じた中田康陽マーケティング部ブランド担当主査シニアブランドマネージャーは「現時点では『エッセンシャルズ』と『W』の2つがヘルスサイエンス領域の大きな構成比を占める。今後はプラズマ乳酸菌などの独自素材を活用してこの領域を広げていく考えだが、土台となるのはこの2つであるというのは経営層・全従業員が認識していると思っている」と語る。

 果汁飲料市場が近年低迷する中、「トロピカーナ」の21年販売数量は前年比10%増を記録。このうち「エッセンシャルズ」は25%増を記録して7年連続の成長を遂げ、「W」は31%増と大幅に拡大した。

 「エッセンシャルズ」は、20年に大きく伸長した280mlPETの「マルチビタミン」が微減となったものの、昨年3月に、「マルチビタミン」「鉄分」「食物繊維」「マルチミネラル」の330mlプリズマ紙容器4品をリニューアル発売したことが奏功してチルド小型容器以外からの新規顧客を多く獲得して成長を遂げた。

左からキリンビバレッジの中田康陽マーケティング部ブランド担当主査シニアブランドマネージャー、山口彩マーケティング部アシスタントブランドマネージャー - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左からキリンビバレッジの中田康陽マーケティング部ブランド担当主査シニアブランドマネージャー、山口彩マーケティング部アシスタントブランドマネージャー

 この動きについて、山口彩マーケティング部アシスタントブランドマネージャーは「チルド小型容器以外からの流入で多かったのはペットボトルコーヒー。休憩になんとなく甘いものが飲みたいが健康も気になるニーズが背景にある」との見方を示す。

 「エッセンシャルズ」は今年、甘いものが飲みたくなるときに栄養も摂れることを昨年以上に踏み込んで訴求する。

 広告は「私、栄養は果実でとる派です」というキーメッセージを継続しクリエイティブを追加。「健康は気になるけど、何から始めればよいか分からないお客様に、休憩に甘いものを摂るのであれば、栄養も摂れるものとして『エッセンシャルズ』を提案していく」。

 これにより、カテゴリー内外から増加傾向にある流入の動きを加速させる。
 「今年は30-40代女性中心とした新規ユーザーをターゲットにさらなる間口(飲用層)拡大を図っていく」考えだ。

2月22日にリニューアル発売した「トロピカーナ」栄養素入り低果汁の「W(ダブル)オレンジブレンド」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
2月22日にリニューアル発売した「トロピカーナ」栄養素入り低果汁の「W(ダブル)オレンジブレンド」

 一方、30-40代の男性を中心に支持される「W」は2月22日にリニューアル発売。果実感あふれる味わいに磨きをかけたほか「Wが意味する“おいしさと栄養”の訴求を強化すべく『W』のロゴを『トロピカーナ』ならではのカラフルな色合いに変更した」。

 「W」は19年の発売開始以降、3年連続で成長し間口・商品認知率も拡大傾向にある。

 この要因については「コンビニの棚などで、うす甘くて健康にいい飲み物がなかなか無い中、少し甘いものが欲しくて健康も気になる男性に響いている」とみている。

 「トロピカーナ」では「一番ハッピーな、ナチュラル栄養源」をブランドビジョンに掲げ「中期・中長期的に果汁飲料も野菜飲料に匹敵する栄養補給ができる飲み物であることをこの国に根付かせたい。しかし一足飛びにストレート果汁の定着化は期待できず、第一歩として栄養素入り低果汁で果汁を飲むという習慣を掘り起こしていく」(中田シニアブランドマネージャー)。

「トロピカーナ」100%果汁の大型容器「100%まるごと果実感」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「トロピカーナ」100%果汁の大型容器「100%まるごと果実感」

 この方針にプラスアルファして巣ごもり需要とプチ贅沢需要の恩恵を受けている100%果汁の大型容器「100%まるごと果実感」にも期待を寄せる。

 「100%まるごと果実感」は20年、コロナ禍による環境変化で新規ユーザーと4割の高いリピート率を獲得して10%程度伸長し過去最高の出荷を記録。21年も100%果汁大型容器カテゴリーが再びダウントレンドに転じる中、好調を継続し過去最高出荷を更新した。

 「巣ごもり生活をきっかけに自宅で摂る食品を見直し、果汁飲料に対してもおいしさや品質をより重視して高価格帯を許容する人が増えている。今後もブランドの強みであるおいしさと品質を店頭でお客様が直観的に認識できるアプローチを実施していく」と意欲をのぞかせる。

 なお全国清涼飲料連合会の「2021年清涼飲料水生産数量及び生産者販売金額」によると果実飲料等は21年、生産量が2.6%減の136万2900ml、生産者販売金額が3.8%増の3.8%増の2971億9300万円を記録した。

 またインテージSRI+によると、果汁飲料カテゴリー販売金額は近年右肩下がりで21年は前年比4%減と推定している。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)