ペットボトルの資源循環を新技術で後押し キリン・三菱ケミカルの共同プロジェクトでメカニカルリサイクル補完

 キリングループは、ペットボトル(以下ペット)の資源循環を三菱ケミカルとの共同プロジェクトによるケミカルリサイクルの新技術で後押しする。

 23日発表したキリンホールディングスの門脇寛CSV戦略部主幹は資源循環の全体像について「環境に配慮した商品を通じたお客様とのコミュニケーション・回収ルートの整備拡大・ケミカルリサイクル技術の実用化でプラスチックが循環し続ける社会を目指していく」と説明する。

 共同プロジェクトは、新たな化石燃料の使用量削減を目的に、使用済みペットをPET樹脂(ポリエチレンテレフタレート、以下PET)の分子レベルまで分解するケミカルリサイクル技術を確立し、使用済みペットを再びペットにする循環利用とペット以外のPET樹脂再資源化を実現するもの。

 2020年に始動し、現在はオープンイノベーションを取り入れながら再生ペットの品質・経済性・環境調和性の3つを実現すべく検討を進めている。

 これによりキリングループで掲げる環境目標の実現を後押ししていく。

 今後のスケジュールについて、キリンホールディングスの大久保辰則R&D本部パッケージイノベーション研究所主務は「19年に策定した『キリングループプラスチックポリシー』ではペットにおけるリサイクル樹脂の割合を27年までに50%に高め、『キリングループ環境ビジョン2050』ではリサイクル材やバイオマスなどを使用した持続可能な容器包装を100%にすることを目標に掲げており、これらに寄与できるようにケミカルリサイクルを立ち上げていく」と語る。

 キリングループは、使用済みペットの正しい分別回収を啓発するなどしてメカニカルリサイクルを促進しつつ、それを補完するものとしてケミカルリサイクルを活用していくとみられる。

 ケミカルリサイクルは化学的再生法と呼ばれ使用済みペットをPET樹脂の分子レベルまで分解。

 これに対し、現在主流となるメカニカルリサイクルは物理的再生法と呼ばれ、使用済みペットを選別・粉砕したフレーク(薄片)をアルカリ洗浄し高温・真空下にさらして樹脂に染み込んだ汚染物質を吸い出す手法となる。

 このため、メカニカルリサイクルの対象となるのは、正しく分別・回収された不純物のない良質な使用済みペットと限定されることから「入札価格が日々上昇して“取り合い”の事態になっている」という。

 一方、ケミカルリサイクルは、繰り返しリサイクルされてメカニカルリサイクルでは完全に再生できない品質劣化の使用済みペットやペット以外のフィルム・シートの素材も対象とする。

 ケミカルリサイクルの課題は、メカニカルリサイクルに比べ工程数が多く、そのための熱や時間を多く要する点にある。

 現在、この点を含めた課題解決に向けて、ペットの最適な解重合技術の実用化に向けたパートナー企業を選定中で「コスト面・実用性を含めて来年中ごろには解重合のパートナーを確定していく」。

 そのほか静岡大学との共同研究やファンケルとの連携を推進しケミカルリサイクルのさらなる環境負荷低減などに取り組む。

 ケミカルリサイクルなどの技術開発と並ぶ資源循環の柱として容器・包材やペット回収の取り組みも加速していく。

 キリンビバレッジの大谷浩世企画部担当部長は、容器・包材のブランドを通じた取り組みについて「環境フラッグシップの『生茶』ブランドを中心にブランド体験を通じた環境・物流の取り組みを推進していく」と述べる。

 「生茶」は4月26日のリニューアル発売を機に、「生茶」「生茶 ほうじ煎茶」(525ml・600ml)に新容器を採用してラベル短尺化したほか、メカニカルリサイクルによる再生PET樹脂を100%使用した「R100 ペットボトル」の対象アイテムを拡大していく。

 また新容器の角形ボトルを採用することで、積載効率アップによる環境負荷低減とコスト低減も見込む。
 525mlPETのケース(24本入り)は現行品と比べ幅を7ミリ縮小。これにより1パレット当たりの積載ケース数は48ケースから60ケースに増え積載効率は1.25倍となる。