三菱食品の森山透社長は11日の決算説明会(リモート形式)で、「新型コロナウイルスの感染拡大で事業環境は変わった。(仮にコロナが収束しても)以前と同じ状況には戻らない。コロナで働き方が一変したように、デジタル化で生産性を高め、変革のスピードを加速させる。食品流通のオーバースペックなサービス・機能を見直すきっかけにもなる」との認識を示した。
同社の前3月期は2期ぶりの減益決算となったが、第3四半期末に下方修正した業績予想を売上高、利益とも上回った。
新型コロナの感染拡大で、2月後半からの家庭用食品の需要急増に対し、食の安定供給維持を果たすべく緊急対応を強化。森山社長は「当社の使命である『日本の食を支える』不変の価値を再認識した」と振り返る一方、受注の急増に「センターの人員確保に加え、感染予防対策でピースピッキング作業は人の距離を空ける」など、物流現場は対応に追われた。
従来から物流与件の緩和を進めてきたが、コロナを機に、ともすれば以前は総論賛成・各論反対だった意識は変わり、重要性が認識されつつある。
こうした現状を踏まえ、森山社長は「(持続的な物流環境と安定供給を維持する上で)本当に必要なサービス・機能を、製配販全体で見直す必要がある。デジタル技術によってムリ・ムダ・ムラを削減し、生まれた利益はサプライチェーン全体でシェアすべき」との考えを強調した。
その上で、中計2020の最終年度となる今期は
①卸事業の再強化
②デジタルを活用した構造改革
③持続可能な未来に向けた取り組み(SDGs)
――を基本施策にスピード感をもって変革を進める方針。
①は新たな事業の柱として、生活者の多様なニーズに対応したオリジナル商品の展開を強化。健康ブランドの「からだシフト」をはじめ川上寄り事業を継続強化する。
また、既存の卸事業ではデジタル技術を活用した営業スタイルの変革を推進。取引先と連携した物流与件緩和を進めるほか、検品・伝票レスや入荷予約受付システムなど、業界全体で物流の生産性向上に取り組む。
②は、膨大なデータを活用した社内外・業界連携で、食品流通の効率化と需要創造を目指す。社内業務の効率化ではRPA/OCR・AI照合の展開を完了、今年度は7万時間の削減効果を創出する。AIによる需要予測は実行フェーズに入り、今年度中に小売業5~10社との取り組みを開始予定。社外向けでは棚割・データ分析・販促提案のデジナル化や、メーカーのマーケティング支援、商品マスタなど非競争領域における業界連携の取り組みも強化する。
③はSDGsの重点課題に対し、2030年度までの目標KPIとして「健康に資する商品の創出/拡充」「CO2排出量16年度対比25%削減」「食品廃棄量16年度比50%削減」「健康経営の実践によるエンゲージメント向上」を設定した。