明治グループは、カカオ産地支援を従来のやり方から進化させて利益成長(ROE)とESG指標の改善を同時に果たすことを目指す「明治ROESG」を推進していく。
明治では、2006年から独自のカカオ農家支援活動「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」を展開。カカオの苗木の配布や井戸の寄贈、営農指導などを行う従来のMCSのやり方を見直し産業振興の機運を醸成するなどして自走を促す。副収入見込める新農法の推進や栄養の提供も行う。感染症対策の支援も視野に入れる。
9月24日、発表会に臨んだ明治ホールディングス(HD)の松田克也社長CEOは「これからはお互いが同じ目線を持ち対等なパートナーシップで取り組むことが重要」との考えを明らかにする。
カカオ産地支援先の一丁目一番地にはガーナ共和国(ガーナ)を挙げる。明治は「明治ミルクチョコレート」発売100年の歴史とともにガーナと歩んできた。
9月14日、明治HDはガーナ現地で「明治ミルクチョコレート100周年記念式典」を開催。松田社長をはじめとする明治グループの幹部・関係者がガーナ政府関係者らの来賓を迎え入れ、グループ一体でのパートナーシップ強化に向けた調印式を実施した。
今回、明治HDとガーナが手を結んだ協力意向書は、今後のMOU(基本合意書)や契約に発展しうる大元の上位概念となる。
「日本とガーナ両国の連携のもとで進められる官民共創の枠組みであることも重要な特徴。個別のプロジェクトの実施に留まらずガーナと明治グループが必要なカカオ産業と将来像を共有し、その実現に向けた包括的な枠組みを構築した点に独自性があると考えている」と説明する。
パートナーシップ強化にあたっては、食と医薬の事業を展開する明治グループの強みを活かして従来よりも活動の幅や視点を広げ、持続可能な農業、気候変動対応、農家所得の向上、地域雇用の創出、資源循環の推進などに取り組む。
この中で自走を促す動きとしては、カカオ農家の収益向上と地域雇用の創出に貢献することを目指して、カカオの未活用部位を原料とするバイオプラスチックの共同実証・事業家に向けた検討が挙げられる。
「現地で産業を興し雇用を生み出していかないとダメ。しかも、今まで捨てていたカカオハスク(カカオの種皮)などを活用する。その技術や知見は日本や明治が提供させていただくので『産業を興して下さい』と促していく」という。
ガーナ政府からもアップサイクル事業やカカオの付加価値向上に対する高い関心が示され、経済産業省の「令和 7 年度補正グローバル サウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)」 のうち、FS事業として採択された。
今後、ガーナ政府やガーナにおけるカカオ産業統括機関である「Ghana Cocoa Board(ガーナ・ココアボード)」をはじめとする関係機関と連携しながら推進していく。
明治の萩原秀和常務執行役員コンフェクショナリー事業本部本部長は「官民一体での社会実装を目指していく」と力を込める。
カスカラ(カカオの実の殻)やカカオハスクで作られたバイオプラスチックは土壌で分解されることから、ガーナで社会問題化しているプラスチックごみ削減にも貢献しうる。
同事業本部の宇都宮洋之副本部長は「ガーナにおける発電はほぼ水力発電。その取水口にプラスチックが詰まって停電するということが起こったと聞く。このようなことを我々の技術であれば解決できると(ガーナ政府に)非常に高い関心を持っていただいている」と語る。
原油由来のプラスチックと比較してCO2排出量が抑えられる点もメリットに挙げる。
明治は仏・TOUTON(トゥートン)社とバイオプラスチック事業実証・事業化に関する協力意向書を締結。欧州におけるプラスチック規制が2026年8月にスタートした中、ガーナ産カカオプラスチックの欧米輸出を視野に入れる。
バイオプラスチックのほか、アグロフォレストリー(森林農法)や栄養・衛生支援など明治グループの食と医薬の資産を活用していく。
アグロフォレストリーについては、2006年からブラジル・トメアスー農協と連携して導入し、同農法によるカカオ豆を商品化。
この経験と知見を活かして、ガーナでの持続可能なカカオ生産を目標として、2020年にOHAYOガーナ財団のデモンストレーション農場にアグロフォレストリー区画開発と管理の支援を開始し6年目にチョコレート試作可能なカカオ豆の収穫に漕ぎつけた。
今後は「農林水産省さまのご協力もいただきながら、この農園をより先進的なものに変えていく」と意欲をのぞかせる。
生産性向上や農家の所得向上を目的に、AFARINIC社と連携して初のプランテーションを開設しアグロフォレストリーの導入につなげる。
宇都宮氏によると、ガーナには約60万軒の小規模農家が点在。1農家あたり3ヘクタール程度の広さの農園を持ち約1万トンのカカオ豆を生産、その総和の約60万トンがガーナ産カカオ豆の生産量となる。
プランテーションに取り組むことで生産性は現状の3倍程度を見込む。
「我々が指定した病気にも強い品種と加工方法を導入しながら、アグロフォレストリーも導入して背弧物はバイオプラスチックに加工する。このような循環型の新しい農園に作り上げていく。200万本の苗木の準備ができている。奥のほうにある湖から水を引っ張ることで灌漑設備も完備でき生産性を高めるには十分な設備」と胸を張る。
アグロフォレストリーにはココナッツなどカカオの樹よりも背の高いシェードツリーを必要とすることから「農家の方は副次的な農産品でも収入を得ることができる。上手く組み合わせると年間で作物が収穫できるシステムでもある」とみている。
持続可能な農業を支えるガーナ国民の健康増進に向けて、栄養・医薬品のサポートにも踏み込む。
「ブラックスターズ」の愛称を持つサッカーガーナ代表はアフリカの強豪として知られる。この中で欧州の有名クラブで活躍する選手は、ガーナと欧州の寒暖差などから体調をくずしやすいという。
この課題に対して、ガーナサッカー協会に所属する選手を栄養面からサポート。プロティンブランド「SAVAS(ザバス)」の製品提供と栄養サポートを実施する。
JETROの協力のもと「ザバス」製品1年分を寄贈するとともに、2026年11月から、選手に向けて明治グループ栄養士による栄養指導を計画する。
明治の八尾文二郎社長は「大げさには考えていないが、ヨーロッパでの『ザバス』製品の露出を多少視野に入れて寄贈させていただく。製品の寄贈に留まらず、選手のコンディショニングや競技力向上を支える栄養に関する知見の提供、指導支援も同時に行わせていただく」と述べる。
2027年は、日本とガーナは、外交関係樹立70周年、JICA海外協力隊(JOCV)ガーナ派遣50周年、野口英世博士ガーナ渡航100周年の節目の年を迎える。
野口博士が師事していたのが北里柴三郎博士。北里博士の孫・北里一郎氏が元明治製菓(現明治HD)社長を務めていた縁もあり、明治グループは感染症領域のリーディングカンパニーの側面を持つ。
今年、ペニシリン製造販売から80周年を迎え、ガーナをはじめとするアフリカにはデング熱ワクチンやMpox(エムポックス)ワクチンなどの感染症領域での貢献も視野に入れる。
Meiji Seikaファルマの成瀬毅志取締役専務執行役員医薬品セグメント研究開発統括・研究開発本部長は「ガーナをはじめとするアフリカ地域では感染症の予防、治療に対するニーズが依然として高く、ワクチンや抗菌薬を通じて貢献できる可能性があることを改めて認識した。感染症領域における研究開発力と製造・供給の知見を生かし、アフリカ地域における医療アクセス向上や公衆衛生発展への貢献を目指していく」と意欲を示す。
