子どもたちは、どんな形で漬物と出会っているのか。漬物の家庭内消費が縮小し、「食べる習慣」そのものが薄れるなか、次世代との喫食接点をどうつくるかは業界共通の課題となっている。弁当や外食など漬物を口にする機会は残るものの、その接点を「おいしい」という食体験につなげ、次の喫食機会をどう生み出すかも重要になる。ともに福神漬主力メーカーの新進とやまうは、小学校の家庭科教育を通じ、子どもたちに漬物を「知る」「食べる」機会を提供する食育活動を5年間続けている。

総務省の家計調査では、1世帯当たりの漬物年間購入数量は2000年の約4052gから25年には約2754gへ3割以上減少した。家庭の食卓に上る機会が減れば、子どもが漬物を食べ、味に親しむ機会も生まれにくい。漬物は嗜好性が分かれやすく、地域の食文化とも密接で、「食べ慣れているか」が受容を左右する食品でもある。家庭内で自然に生まれていた喫食機会を、どこでどうつくり直すかが問われている。

両社の食育活動は、こうした接点を学校教育の中につくる取り組みだ。小学校家庭科では日本の伝統的な食文化を学ぶ一方、漬物を詳しく扱う教材は少ないことから副教材を制作。子どもになじみのある福神漬に着目し、「7種類の野菜」「名前の由来」といった題材を盛り込んだ。さらに実際に福神漬を味わう機会を設け、「学ぶ」と「食べる」を組み合わせている。
活動では「子どもから家庭へ」の波及も重視する。児童が学校で学んだ内容を家庭で話し、持ち帰った福神漬を家族と食べることで、学校での体験を家庭の食卓へつなげる狙いだ。実施校からは、授業当日の夕食でクラスの約8割の家庭が福神漬を添えたカレーを食べたとの報告もあった。「漬物を売る」のではなく、まず「知って、食べるきっかけ」をつくる活動と位置付ける。
取り組みは22年に82校、1万10部でスタートし、26年は129校、1万6100部に拡大。5年間で延べ553校、7万546部を配布した。東京都では約250校、群馬県では59校が参加し、それぞれ地域の小学校のおよそ2割に相当する。複数年にわたり活用する学校も増えている。

26年は東京都と群馬県の全小学校、神奈川、千葉、埼玉の一部を含む約2千校に案内。応募した129校に副教材を配布し、うち122校には実食用として新進の「国産野菜カレー福神漬 減塩」と、やまうの「やさしい福神漬」も提供した。
学校側の評価も高く、26年の自由回答からは、「これまで福神漬を知らなかった」「食べたことがなかった」児童がいることも分かった。一方、「授業をきっかけに食べる量が増えた」、「2種類の商品を食べ比べた」、「家庭でカレーと一緒に食べた」、「レシピを考えた」といった反応も寄せられている。学校での体験が、家庭での新たな喫食機会の創出にもつながり始めている。
漬物を「知っている」ことと、「食べる習慣がある」ことは同じではない。学校で知り、実際に味わい、その体験を家庭へ持ち帰る。5年間続く両社の取り組みは、次世代との接点を「おいしい食体験」として積み重ねながら、家庭の喫食機会を子どもからつなぎ直す試みとなっている。
