「チューニャン」をご存じだろうか(記者は知らなかった)。漢字では「酒醸」。エビチリをはじめ、中国料理のコクを増すのに欠かせない発酵調味料のひとつだ。日本では知る人ぞ知る存在だが、実は中華料理店で広く使われている定番食材でもある。
これまで国内では、ほぼ1社のみが業務用の缶詰製品を取り扱ってきた。ところが今年に入ってから、委託先のメーカーが倒産。急きょ製造中止となり、中華業界に衝撃が走った。
コメと米麹を発酵させて作る酒醸は、後述のように製法上の違いはあるものの、日本の麹甘酒に味が近い。このため専門店の間では、甘酒を代替として利用する動きが広がった。
ここに目を付けたのが、メーカーの伊勢惣(東京都板橋区)。味噌や甘酒、塩麹を手作りする人にはおなじみの「みやここうじ」をはじめ、麹関連製品を主力とする。
“チューニャン騒動”を受けて、営業部隊が動いた。代替品として同社の甘酒をプッシュしたところ採用が相次ぎ、早くも業界に浸透しつつあるという。
「ただ所詮は甘酒なので、ユーザーからは『やはり酒醸が欲しい』『酒醸でなければダメ』という声も多かった。うちは麹メーカーが本業。まさに得意分野だ」。伊勢惣の足立昇司専務が説明する。
そこで、代替品ではない「酒醸」そのものの商品化に踏み切った。

原料はほぼ同じながら、約55℃で十数時間発酵させて作る甘酒に対し、酒醸は常温で2~3日。アルコール発酵が進むことで、甘酒にはない独特の酸味が生まれる。同社が培った技術とノウハウで新たに開発した業務用1㎏製品を、4月20日から発売する。
「酒醸は日本人の大半が知らないと思うが、限られた中華系の市場では騒動になった。今後、場合によっては新しい調味料として注目されることもあるかもしれない」と期待を語る足立専務。酒醸ブームも近い?



