2020年代も半ばを過ぎた。22年から続くインフレ・円安の波は4年目に入っても収束の気配はない。この春も食品をはじめ様々な消費財の値上げが相次ぐとみられ、生活者の財布の紐はいまだ固いまま。世界に目を移せば、内向き志向を強める国家間の対立はますます深まりそうだ。空を覆う暗雲を吹き飛ばす1年となることを願いつつ、本紙新年号吉例・元祖「業界天気予報」をお届けする。
元日夕方に襲った能登半島地震の衝撃で始まった昨年。その後も相次いだ小規模地震、宮崎県での地震に伴う南海トラフ臨時情報、そして9月に再び能登を襲った水害と、自然災害の脅威を改めて意識させられた1年でもあった。
「もしも」のための食品備蓄の意識も高まっていたところに、「令和の米騒動」が重なった。
この10年だけでも、コメ消費量は1割以上減った。日本人がかつてに比べコメを食べなくなったとはいえ、店に行っても手に入らないとなれば一大事。入荷すれば即完売となる店頭では、代わりにパックごはんや麺類を置く売場も続出した。
新米が出回ってからも、店頭価格は高止まり。いつもは5㎏で2000円もしなかったコメが、一気に3000円台もざらという激変に消費者は戸惑った。
だが、実態は「いつも」の価格が安すぎたということなのかもしれない。「ほぼ100%」のコメ自給率にあぐらをかき、コメ農家の95%が赤字である事実に無関心を決め込んできたわれわれが、強烈なしっぺ返しを食らった。それがあの「騒動」だったのではないか。
迫り来る激変に、社会の成熟度が問われる2025年。今回、本紙が「はれ」「快晴」と予報した品目・業種は24。全体の2割ほどで昨年とほぼ同様だ。「くもりのちはれ」「あめのちはれ」など晴れが望めるのは19。合計で全体の4割弱。
「くもり」「うすぐもり」は60品目・業種で、昨年から二ケタほど増えて全体の5割を超えた。先行きの不透明さを予感させる。「あめ」は5品目にとどまった。
小売の動向を見てみると、量販は昨年の「うすぐもり」から「くもりのちはれ」へと好転した。買上点数の減少傾向が懸念材料で、客数は回復してきたものの、節約志向に歯止めがかからない。商品に磨きをかけるなどして点数増に挑む。
コンビニは昨年に続いて「はれ」。ただし、消費者の生活防衛意識の高まりで客数への影響が見られる企業もあった。客数回復が重要となる。
外食は「はれところによりくもり」。訪日外国人客の増加によるインバウンド需要の押し上げもあり、市場拡大が続いている。
外食との競争激化が進む中食・惣菜は「はれ」。23年の市場規模は前年比約5%増の10兆9827億円になった。大手小売業を中心に「おいしさ」と「リーズナブルな価格」の両立を目指した商品開発が加速しており、先行きは明るい。
基礎原料系の品目では、業務用塩は「くもりのちはれ」。輸入原料塩の価格改定で特殊製法塩の値上げが必須となる見込み。砂糖は「くもりときどきはれ」。人流回復や訪日外国人の増加で業務用大袋が回復傾向を示したが、消費マインドの低迷もあり回復は力強さに欠ける。いずれも晴れ間は覗くものと予想した。
茶(リーフ)は「くもり」。急須を持たない世帯が増加する中、茶葉量が多い大型ティーバッグや夏場の「氷水出し」など、おいしさ訴求に期待がかかる。
乾椎茸、かんぴょうは2年連続の「あめ」予想。高齢化や後継者難を背景とした供給の低迷が続いており、今年も難しい課題と向き合わなければならない。
唯一の「濃霧」予報なのが海苔。22年海苔年度から2年連続の不作に悩まされた。昨年11月に入札が始まった最大産地・有明海の状況は今年も芳しいとはいえず、色落ちの報告も上がっている。平均単価は前漁期以上に高騰しており、3年連続の値上げは必須とみられる。
昨年にも増して厳しい状況が予想される今年、流通店頭の動きのみならず生産者サイドの事情も踏まえた持続可能性の高い選択が求められている。果たして食品業界は成熟度を高めて無事“脱皮”できるのか。試練の1年となる。