10.8 C
Tokyo
16.6 C
Osaka
2025 / 12 / 20 土曜日
ログイン
English
トップニュース気候変動とワイン 伝統産地に消滅危機 新産地出現も 塗り替わる地図 環境激変に適応急ぐ

気候変動とワイン 伝統産地に消滅危機 新産地出現も 塗り替わる地図 環境激変に適応急ぐ

近年の世界的な気候変動は、多くの農作物生産に影響を及ぼしている。テロワール(自然環境要因)に品質が左右されるワイン用ブドウも例外ではない。日本のワインメーカーも対策に本腰を入れ始めている。

気候変動による過度の干ばつと熱波の頻発で、伝統的なワイン産地の約90%が今世紀末までに消滅するおそれがある――。そんな予測を示す研究結果が今年3月、フランスの農学研究所ボルドー・サイエンス・アグロなどによって発表された。

影響は日本ワインにも表れつつある。年々強まる夏場の猛暑から、より冷涼な産地での生産に注目が集まるようになってきた。

欧州系のブドウ品種を中心とした日本ワインに取り組んできたサントリーでは、近年の気候変動も背景に、日本固有品種「甲州」に改めて力を入れる。

同社がワイナリーを構える「登美の丘」を中心に山梨県での生産に取り組んできた「甲州」で、新たな試みに挑戦。より冷涼な長野県・立科町産ブドウを100%使用した「立科町 甲州 冷涼地育ち2023」を9月に発売した。

「産地の積算温度は直近3年間で毎年100℃くらいずつ上がっていて、急激に温暖化が進んでいる。山梨と長野では、できるワインがだいぶ変わってきている」と話すのは、同社ワイン本部シニアスペシャリストの柳原亮氏。「山梨以外で『甲州』を作るとどうなるのか知りたかった」と狙いを語る。

山梨では糖度が上がるにつれて酸度が落ちる一方、長野では酸度を保ったまま熟す傾向が強いといい、冷涼なテロワールを生かすことで山梨とは異なる「甲州」の魅力を追求する。

日本ワインブランド「シャトー・メルシャン」を展開するメルシャンでは、温暖化への対策の一つとして標高の高いエリアに圃場を新規開拓している。

気候変動対策へ農研機構との研究にも取り組む「シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード」
気候変動対策へ農研機構との研究にも取り組む「シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード」

椀子ヴィンヤード(長野県上田市)は標高650m。現在8品種を栽培する。さらに標高800mの同県・片丘ヴィンヤードなどで新規開拓した圃場でも、高品質なワイン造りで成果を得ている。

他方で標高が低い鴨居寺ヴィンヤード(山梨市)では、20年から品種をシラーに一本化。適地・適品種を見極め実行できたことで、高品質なワインの生産本数拡大につながった。

「ワイン造りは農業なので、気候変動は重要な課題。当社のパートナーワイナリーであるコンチャ・イ・トロ社(チリ)は、温室効果ガス排出を40年までにゼロにすることを目指し、自然林による炭素回収などの取り組みを行うなど、持続可能なワイン造りに取り組んでいる」(同社)。

さらに、冷涼な北海道の産地にも熱視線が注がれる。日本ワイン「グランポレール」を展開するサッポロビールは、余市町と北斗市の道内2拠点でブドウ生産を行う。

温暖化の影響から、北海道でも良質なワイン用ブドウが採れるようになってきたという。昨年に初ヴィンテージをリリースした北斗ヴィンヤード(北海道)からは、「日本ワインコンクール2024」で金賞を受賞したセカンドヴィンテージ「北斗シャルドネ2023」を9月に発売。産地としてのアドバンテージが強まると期待される北海道産ワインを強みに、日本ワインを盛り上げる。

冒頭の研究では、既存産地が消滅の危機を迎える予測の一方で、以前はブドウ栽培に適さなかった地域に新しいワイン産地が出現する可能性も指摘されている。ワインの未来地図が大きく塗り替わろうとしている。

(11月8日付本紙に「ワイン特集」)

関連記事

インタビュー特集

米国の認証機関として、米国輸出への総合支援に自信 認証だけでなく、企業の社会的信頼を高める仕組みづくりもサポート ペリージョンソン ホールディング(PJR) 審査登録機関

ペリージョンソン ホールディング(TEL03-5774-9510)は、ISO認証、ビジネスコンサルティング、教育・研修事業を通して顧客のサステナビリティ活動の普及に尽力。

国際的情報豊富な感覚で審査を展開 細分化したフードセクターに精通した審査員多数 SGSジャパン(SGS) 審査登録機関

SGSはスイス・ジュネーブに本拠を置き、試験・検査・認証機関としては世界最大級の規模である。世界115カ国以上に2500以上の事務所と試験所を有し、各産業分野における検査や試験、公的機関により定められた規格の認証などを行っている検査・検証・試験認証のリーディングカンパニーである。

キンレイ「鍋焼うどん」、さらにおいしく進化 自社工場でかつお節を削り出した理由とは 50年のこだわり脈々と

キンレイの冷凍具付き麺「お水がいらない」シリーズが販売好調だ。2010年に立ち上げ、昨24年までに累計2億食以上を販売している。

日本酒「獺祭」輸出4割増 「海外トップブランドが強み」桜井社長

清酒「獺祭」の輸出が世界各国で伸びている。前9月期は総売上高213億円(前年比9%増)のうち、輸出実績(未納税含まず)は79億円、実に4割増だった。

日清オイリオ久野社長 価格改定の早期完遂目指す 家庭用、中長期視点で強化

日清オイリオグループの久野貴久社長は、喫緊の課題として価格改定の早期完遂と、ホームユース(家庭用油)の販売強化に取り組む方針を示した。