飲食店でも家飲みでも、いまや当たり前の飲み方として定着したハイボール。今に至るウイスキー市場躍進の呼び水としての役割を果たした。さらにここにきて、ウイスキー以外でも“進化系”ハイボールを楽しむ動きが広がりをみせている。
海外では、ウイスキーをソーダで割る飲み方が日本ほど一般的ではないことが多い。日本独自の発展を遂げつつあるソーダ割文化は、近年は他の蒸留酒にも拡大。その契機となったのが、サントリーが20年に投入した国産ジン「翠」だ。
22年にはRTD「翠ジンソーダ缶」も登場し、チューハイ、ハイボールに続く“第3のソーダ割”としてジンが日本の飲酒シーンに浸透した。
さらにチューハイやレモンサワーが定着している甲類焼酎と比べて、ストレートで飲まれることが多かった芋・麦などの本格焼酎でも、ソーダで割る飲み方が普及してきた。
これに着目したのが、世界No.1ブランド「バカルディ」を展開するバカルディ・ジャパン。11年から国内独占販売契約を結ぶサッポロビールの販売力も武器に、日本のラム市場をけん引する。
同社の調べではウイスキーのハイボールに満足していないユーザーが約2割いることが分かったといい、樽熟成による色や味わいがウイスキーと親和性がある「バカルディゴールド」によるハイボールを昨年から提案している。
「ラムはこれまで、カクテルを飲む人たちの間でしか飲まれていないお酒だった」と語るのは、同社マーケティングマネージャーの奥村龍太郎氏。
「ウイスキーのハイボールは好きじゃないけど仕方なく飲んでいる人がいる。まだ好きなものを見つけられていない人に情報を届けられれば、われわれとしても勝算がある」。
「みんなで楽しく飲むのがラムの本質」とみて、ウイスキーの世界観との棲み分けも意識。トロピカルで陽気なイメージを前面に、音楽好きな“パリピ未満”の層に訴えかけるプロモーションを展開する。今年は渋谷でのポップアップストア、サマソニ(SUMMER SONIC・サマー・ソニック)へのブース出展などが好評を集めたほか、人気アーティストのRIP SLYMEとサーヤを起用したコラボ楽曲をWEB動画などで展開中。
店頭POPでも「またそれでいいの?さぁ、バカルディハイボール」と、挑発的なコピーでウイスキーからのスイッチを促す。
ハイボール推しが奏功し、1―7月の「バカルディゴールド」販売量は家庭用・業務用ともほぼ倍増。取扱店舗が広がっているほか、店頭での回転も上がってきた。これまで「バカルディホワイト」のみだった売場に「ゴールド」が並ぶケースも増えている。
現状はウイスキーの100分の1程度にとどまるラム市場だが、同社では30年ごろまでに2倍以上の100億円規模とする野望を掲げる。