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流通・飲食國分勘兵衛 平成を語る〈9〉 大規模災害に学ぶこと

國分勘兵衛 平成を語る〈9〉 大規模災害に学ぶこと

難易度高い最適備蓄 政府は民間流通にも目を

平成7年〈1995〉の阪神淡路大震災、平成23年〈2011〉の東日本大震災を筆頭に、平成期には大規模な自然災害が多発した。地球規模の気候変化を背景に、日本は今後も大小様々な災害と向き合っていくこととなろう。ライフラインたる食のサプライチェーンの役割はますます重みを増していく。しかし、経営効率とBCPの両立をはじめ、難しい課題も多い。

※  ※  ※

――平成は多くの災害に見舞われた時代でした。食品業界には今後どんな対策が求められますか。

「備蓄と供給継続のあり方をもう一度よく考えるべきだと思います。必需性の高い物資をいかに在庫し、どのように被災地に届けるか。これはとても難易度の高い問題です。どこで何が起きるのかが読めないわけですから、私たち民間企業が適正な備蓄量や保管場所を導き出すのは容易なことではありません」

――昨年の北海道胆振東部地震では、広域停電の影響で道内の大半の食品物流拠点が一時停止に追い込まれました。エリアに十分な在庫があるのに供給が滞ったのは、恐らく初めてのケースです。

「保管場所や復旧のあり方について踏み込んだ議論が必要になるでしょう。また、サプライチェーンの備蓄に厚みを持たせるにしても、そのコストを誰がどう負担していくのかという悩ましい問題があります。

今は製配販すべての層が在庫をなるべく持たない経営を志向しており、備蓄によって生じる倉庫代の増加やキャッシュフローへの影響は経営上のリスクということになってしまいます。これをどう解決するかは今後の大きな課題です」

――流通在庫に厚みを持たせることで、期限切れ廃棄のリスクも高まります。

「そういう意味でも食品ロス削減の話の中で触れた賞味期限の延長がますます重要になるでしょうね」

――供給継続については具体的にどんな課題がありますか。

「いざ災害が発生すると、どうしても政府による避難所への救援物資の供給に比重が行き、私たち一般のライフラインに目が行かなくなってしまうところがあります。避難所には家族や住む家を失った方々が集まっているわけですから、最優先に考えるのは当然ですが、その一方で自宅にいて近くのスーパー、コンビニを頼りにされる方も沢山いらっしゃるわけです」

――東日本大震災のときも、被災3県(岩手・宮城・福島)全体の93.5%が避難所に行かずに自宅などで不自由な生活を強いられた方々でした。

「そうした現実を踏まえ、一般のライフラインが災害時に供給継続に注力できるような環境づくりを進めておくべきだと思います。食品物流の優先順位をさらに引き上げる必要もあるでしょう」

――少し話題が変わりますが、平成の米騒動(平成5年〈1993〉)のときのことを覚えていらっしゃいますか。

「ええ。大変な冷害でタイ米の緊急輸入という異例の事態になりました。国内需給への影響度という意味では、先ほどの世界食料価格危機よりも深刻だったのではないでしょうか」

――ここ数年、大型台風や集中豪雨の影響で青果相場の乱高下が常態化しています。平成の米騒動のような事態になる可能性もゼロではありません。今後の農業生産のあり方をどうお考えですか。

「やはり、民間の知恵が入りやすいように規制緩和を進めていくべきなんでしょうね。ただし、大量生産的な発想だけでは上手くいかないと思います。付加価値の創出に敏感なベンチャーをいかに多く取り込めるかがカギになるでしょう」

(次号に続く)

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