求職者が企業を選ぶ際、求人票や企業HPだけでなく、SNSを通じて職場の雰囲気や社員の姿を確認する時代になった。人手不足が深刻化するなか、食品業界でもSNSを採用活動に活用する動きが広がりつつあるが、その一方で多くの中小・零細メーカーでは発信を担う人材そのものが不足しており、業界の構造的な課題も浮かび上がっている。
大手漬物メーカー・天政松下とSNS運用代行会社「ゼロベー」の両事業に携わる松下雄哉社長は、5月に開催された新潟県漬物工業協同組合総会において、「採用を変える“デジタル化”~SNSが組織を強くする時代へ」と題し講演。そこでは、SNSを「商品PRだけでなく採用活動の有力な武器」と位置付けた。
求職者は求人サイトで条件を確認した後、企業HPやSNSを閲覧し、職場の雰囲気や社員の年齢層、男女比、経営者の人柄などを調べるケースが増えているという。松下社長は、「採用は同業だけではなく全産業との人材獲得競争」と指摘。「企業側が積極的に情報を発信し、求職者に選ばれる努力が必要」だと訴えた。
天政松下ではXやYouTube、TikTokを活用し、社員の日常や職場風景を発信。応募前に会社の雰囲気を理解した上で面接に訪れるケースが増え、入社後のミスマッチ低減にもつながっているという。
一方で、こうした取り組みを業界全体に広げるには課題も多い。SNS運用には企画、撮影、編集、投稿といった継続的な作業が伴うため、参加者からは「必要性は理解していても手が回らない」という声も挙がった。
食品業界では人手不足が長期化するなか、企業規模を問わず採用力の強化が避けて通れない課題となっている。SNS時代において、「どのような会社なのか」を継続的に発信する体制づくりが、新たな経営課題として浮上している。
一方で、採用競争力の向上には情報発信だけでなく、休日数や労働環境など待遇面の改善も欠かせない。求職者の選択肢が広がるなか、食品製造業全体として「選ばれる職場づくり」が一段と重要になっている。



