「シール帳」ならぬ「お菓子帳」に菓子業界発展の可能性がある――。
4月20日、東京カリント(東京都板橋区)に一堂に会したイトウ製菓、エイワ、春日井製菓、クラシエ、東京カリントの5人の広報担当者への取材を通じて、このような可能性が浮き彫りになった。

取材に応じた広報担当者はみな、Xでの企業情報や商品情報の発信を主に担当している縁から投稿に対するリプライやチャットでつながっている。
年2回ほどの頻度で開催される交流会「おかしな会」の主要メンバーでもある。
今回、取材を通してみえてきたのは、菓子の喫食シーン拡大が共通目的であることと、その目的達成のためのXなどSNSでの発信は、個社で行うよりも複数社商品の合わせ技で行うほうが効果的であるということ。
「おかしな会」開催の経緯や「お菓子帳」で見出された可能性などを5人に聞いた。(以下、敬称略)

――「おかしな会」開催の経緯について。
東京カリント 「おかしな会」の立ち上げは、ジャパンフリトレーの担当者とのXを通じたオープンな会話(リプライ)がきっかけ。
「お菓子のパーティーをしよう」と話を持ちかけられ、1対1の話を私が勘違いしてしまい大きな話にしてしまった。かねてからXでつながりのある企業を中心にお声がけして2024年5月に初開催した。
その結果、多くの方々にお集まりいただいて盛り上がったことから、以降、春夏と秋冬の新商品が出されるタイミングに合わせて半年おきに顔を合わせることにしている。
直近の3月27日に開催された第5回「おかしな会」では、ここにいる5社にクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンと壮関の担当者が加わり、初の試みとしてお菓子帳づくりに取り組んだ。
会の開催には、商品提供という形で松永製菓とポッカサッポロフード&ビバレッジにもご協力いただいた。お菓子には飲料が欠かせないということで、毎回、飲料メーカーにもご協力を呼びかけている。
通常は新商品や定番商品の試食とPRにまつわる情報交換などを行っている。おのおのが商品を並べてハロウィンやクリスマスの棚づくりに力を合わせ、その写真を共有して各社の公式Xで発信している。
クラシエ 現在、我々の間ではチャットが飛び交い、新しい企画が早期に立ち上がっている。このようなことができるのも「おかしな会」で一度お互いが顔を合わせられたことが大きいと思っていて、幹事社の東京カリントにはとても感謝している。
エイワ 同業他社が集まるというのはライバル同士で不思議に思われるかもしれない。前職が食品企業だったこともあり、私見では、お菓子業界の企業の垣根は食品全般と比べて低く感じている。その理由は恐らく全てのお菓子メーカーのミッションがお菓子の喫食シーンを作り続けることにあるからだと考えている。
イトウ製菓 同感。イトウ製菓はビスケットメーカーだが、同カテゴリのメーカーとのコラボや同じ企画に参加することは気にしなくていいと言われ、自由にやらせていただいている。

――コラボのメリットについて。
春日井製菓 Xが企業の宣伝みたいになってしまうと受け手もつまらないと思う。春日井製菓では「おはカスガイ」「おつカスガイ」の挨拶などを通じて友達のように親しみをもっていただき、商品の宣伝というよりも会社のことを好きなっていただけるように取り組んでいる。
Xでの企業コラボは、受け手にとっても楽しそうに見えるはず。自社の宣伝だけではない分、アカウントへの親しみ、ひいては会社への親しみにつながるものと考えている。
エイワ エイワはマシュマロメーカーだが、マシュマロがニッチなお菓子ということもあり、マシュマロと企業名が結びついていないことが課題となっていた。
「おかしな会」で他メーカーさんから「マシュマロが合うね」と声をかけていただくことが増え、マシュマロでエイワと言って下さる方が増えているように感じる。
エイワでは危機管理を目的に、ポジティブ投稿とネガティブ投稿をウォッチしているが、昔に比べるとポジティブ投稿が増えている。
具体的には、他社商品と並んだ写真をきっかけに「マシュマロ=エイワ」と言及される投稿が増え、リプライ欄で自然な会話が生まれるケースも目立つようになった。
クラシエ クラシエもブランドが独り歩きしているところがあり、「ねるねるねるね」などのブランド名と社名が結びつくように取り組んでいる。
喫食シーンが増えていく中で、クラシエの商品は喫食シーンがイメージしにくいものも多い。
液体にパウダーをかけてストローでつり上げると長いグミができる知育菓子(※)「グミつれた」もその1つだが、公式Xの「中の人」たちに、長さを競う合う投稿や一番長いグミをつり上げられる人を予想する投稿をしていただき盛り上げていただいた。
独自のつり上げ方も披露していただいたことで、「真似してみたい」と消費者のお手本にもなっていただいたように思う。※知育菓子はクラシエの登録商標
東京カリント かりんとうは、他のお菓子に比べると生活の中に出てくる頻度が少ないかと思う。他のお菓子メーカーとつながり一緒に投稿させていただくことで、ビスケットやキャンディー、マシュマロ、知育菓子などが好きな方にも、かりんとうを見ていただけるようになった。
当社が単独で「かりんとうを食べて」と呼びかけるよりも、いろいろなお菓子をお互いに投稿し合うことで相乗効果が生み出せると思っている。
東京カリントの投稿に映り込むイトウ製菓の「コンフェッティ ショコラサブレ」をご覧になられた方から、東京カリントのアカウント宛に「ショコラサブレ、おいしくて、買いたい」とコメントをいただいたこともあり、このようなことも相乗効果の好例だと思っている。
イトウ製菓 別カテゴリの会社の投稿の中に登場させていただくことで、普段、イトウ製菓をフォローしていない方にも情報を届けられ、フォローしていただくに至ればさらにありがたい。
「ショコラサブレ」は春夏商品で、秋冬は休売していたが、今年の3月から再発売している。今回、東京カリントの投稿に商品が映っていたことで消費者に商品を思い出していただき再購入につながるかもしれず感謝している。
春日井製菓 確かに他社のアカウントに自社商品が露出されていると、申し訳ないと思いつつも、感謝の気持ちでいっぱいになる。
これは広告では絶対にやらないこと。広告費を投じて他社商品を映し出すというのはあり得ない。だが、SNS広報の観点で言うと、自社だけじゃなくてお菓子業界全体を盛り上げていくべき。
お菓子は生活必需品ではないが、天災など有事の際には、被災地へ飲食の必需品が満たされた後には心の必需品になりうる。
実際に「気がまぎれる」といったお声を頂戴する。辛かったときにお菓子で少し元気になれたことを思い出していただけると嬉しい。有事は起きてほしくないが、有事を考えると、お菓子業界で頼もしい仲間がいるというのは心強い。出会えてよかったとしみじみ思う。

――お菓子帳について。
東京カリント 昨年、シール帳がブームになり、お菓子帳はそこから派生したとみている。
昨年末頃から話題になっていることを受けて「おかしな会」でも作ってみたところ、単にお菓子を貼っただけ以上の価値がお菓子帳に詰められていることが、作ってみて初めて分かった。
お菓子帳はお菓子を交換し合うことでコミュニケーションが生まれるのが基本的な価値だと思うが、このような価値に加えて「昔おばあちゃんにもらったお菓子」など自分の思い出も詰めることもできる。
クラシエ お菓子帳を推し色にする場合、店頭で推し色のお菓子を探す楽しみにもつながると思う。最近、見かけたYouTubeでそのような光景が紹介されており、色別にするだけでもワクワクできる。我々もやってみたところ、青色のパッケージが意外に多いという発見もあった。
春日井製菓 本当に見ているだけでワクワクする。これまでパッケージで色分けして並べようと思ったことがなかったが、やってみると、とても楽しく。お菓子の新たな楽しみ方を見つけることができた。
エイワ 正直、マシュマロだけだとスカスカになると思っていたが、他社商品が加わることで一気に世界観が広がった。大きな商品や小さな商品、バリエーションが豊かになることで、とても可愛いお菓子帳に仕立てることができた。
余談だが、お菓子帳づくりや「おかしな会」で恒例のハロウィンなどシーズンの棚づくりの際、皆さんが適材適所で役割を果たし物凄く手際がよいことにとても驚かされる。
イトウ製菓 Xの中での活動であった「おかしな会」が お菓子帳をきっかけに取材を受け、メディアに露出できるようになったことは、業務としても大きい成果であり、皆さんには本当に感謝している。
東京カリント お菓子帳を作られる方へ「おかしな会」からのお願いがひとつある。お菓子を貼ったあとは賞味期限に注意しておいしくお召しあがりいただきたい。個包装のお菓子は外装の開封後、お早めのご賞味をお願いするものもあるため外装の注意書きをチェックしてお楽しみいただきたい。

――今後について。
春日井製菓 「おかしな会」は企業の枠組みを超えた心と心がつながる会であり、毎回、参加するのを楽しみにしている。この楽しい気持ちが消費者の皆さまにも伝わり、お菓子を食べたりしてお菓子に関わっていると楽しいことがあると思っていただきたい。
東京カリント 半年に1回程度の頻度で行われる我々のコラボが恒例になり、「次は何かな?」と見て下さっている方がワクワクするように定着化していくことを目指して、マンネリ化しないように続けていきたい。いろいろな企業のバリエーションがあったほうがいいと思うので、来るもの拒まずのスタンスも心がけていく。
エイワ お菓子メーカーで同じ志を持たれている方々と出会えたことが物凄く幸せ。エイワとしてはこれからもお菓子を食べる楽しさをマシュマロ中心に伝えていくのだが、その楽しさを一緒に伝えることのできる仲間との出会いを大切にしていきたい。
イトウ製菓 運用面などXの話ができるのはXの担当者でないとできない。社内の同僚であっても、実際に関わったことがないと話が通じにくい。Xを担当するのは、私の知る限り1人もしくは2人と少人数で対応しているところが多く、そうした中で、同じ立場で感覚を共有できるこの場は物凄く貴重であり、本当に心の支えになっている。
クラシエ 我々の発信をご覧になられて「真似したい」「お家でもやってみたい」と思っていただける人をどんどん増やしていきたい。そこから「お菓子業界はこんなに楽しいんだ」と思っていただき、ゆくゆくは「お菓子業界に入りたい」と思っていただけるレベルにまでもっていきたい。



