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逆光線(コラム)健康志向は余裕の産物か

健康志向は余裕の産物か

 特集の追い込みに入ると、食事は単なる燃料となる。栄養バランスなど二の次、三の次だ。目の前の空腹さえ満たせればいい。退勤後の道すがら、自宅最寄りのスーパーに立ち寄り、弁当売場へ直行する。迷わずカツ丼を手に取る。入稿までこの繰り返しだ。もし売り切れならば売場の前で立ち尽くす。次の一手が浮かばない。

▼締切前に必ず繰り返すこの習慣が気になり、試しに調べてみた。心理学では「意思決定疲れ」と呼ばれる状態だという。人は日々膨大な判断を重ね、脳のエネルギーが尽きると決める力が鈍る。その結果、何を食べるかを考えることさえ負担になるらしい。

▼なるほど、と腑に落ちた。栄養バランスを整えること自体、主菜や塩分、たんぱく質を同時に考える高度な判断なのだ。減塩、たんぱく質強化、機能性表示。売場には「体に良い」選択肢があふれている。だが締切前の私に、それらは遠い。

▼健康志向は、余裕のある時にだけ成立する理性の産物なのかもしれない。忙しさの渦中にある私は、空腹も心のざわつきも鎮めるべく、米と脂を迷わず選ぶ。

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