「物流クライシスと2024年問題は、当社にとってビジネスを変革させるチャンス」と話すのは日清食品の深井雅裕常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長。安藤徳隆社長の直下でサプライチェーン改革を推進する。「われわれが目指すゴールは構造改革によって地球・社会・人類のウェルビーイングを実現すること。自社内でサプライチェーン(調達・生産・販売など)の最適化を図ると同時に、あらゆる取引先との連携も深め、持続可能な社会インフラを構築したい」と語る。
取引関係からパートナーに
現状について「卸店さま・小売店さま・資材サプライヤーさまといろいろな話を進めているが、まだ情報やデータが分断されていて非効率なサプライチェーンにとどまっているケースが多い」とする一方、「これからはデジタル技術で様々なことが解決され、データ連携が進む。現行の取引関係や競合関係から目線を合わせたパートナーに変わっていく時代が来る」と展望した。
すでに成果が上がっている事例としては、JA全農との垂直連携がある。ポイントは調達物流と製品物流を統合したことだ。
深井常務は「JAさまがカップライスの原料米を当社工場などに運んでくださり、そのトラックを空のまま返すのではなく、復路は当社製品を積んでいただく。それにより実車率を大幅に向上できる」と説明する。
両者は長期的な視点で取り組んでおり、日清食品は中期事業計画における原料米の使用計画をJAに提示しているという。
「当社は将来にわたって安定的にお米を調達したいし、JAさまや農家は買い手が見えることで安心してお米を生産できる。こうした連携をさらに広げていきたい」と話す。
トラック台数2割削減
水平連携としてかねてよりビール・飲料メーカーとの共同輸送も着実に進展している。それぞれの最需要期が、即席麺は冬場、ビール・飲料は夏場と季節指数が異なることと、前者が軽量貨物、後者が重量貨物という組み合わせが肝になる。
深井常務が挙げた例によると、トラック1台につき最大で即席麺だけなら容積積載率96%・重量積載率39%、樽生ビールだけなら容積積載率48%・重量積載率96%と効率性を高めるには限界があった。
しかし製品特性の異なる両者が歩み寄ると、容積積載率・重量積載率の両方を限りなく100%に近づけられるという。

「軽量貨物と重量貨物の組み合わせによって、トラック台数の2割削減につながった。他にも飲料メーカーさまとの共同輸送ではCO2排出量を大幅に削減できている。異業種とのアライアンスは物流の生産性を上げる一つの方向性」(深井常務)と手応えを語る。
ただし「一対一のマッチングには拡張性がない。2社で取り組んでも週や月に数便ずつにとどまることが多い」と課題を指摘。
その解決策として、「共同輸送の効率性をさらに高めるには着荷主さま(卸店・小売店)に起点になっていただくことが有効だと考えている。複数の納品業者(メーカーなど)の荷物を取りまとめて保管・輸送していただくイメージ」との考えを示す。


