明治は、チョコレート市場に革新をもたらす可能性のある新商品「生のときしっとりミルク」を開発し、5月13日から関東甲信越限定で発売する。
新商品は、28℃以下で常温保存でき賞味期限300日のロングライフでありながら、生チョコレートのような柔らかい食感や濃厚な味わいを実現したもの。
スティック形状となっており1箱に個包装された4枚を入れて販売する。同社想定の販売価格は300円台。要冷蔵で賞味期限が短いといった生チョコレートの課題や高単価で気軽に食べられないといったチョコレート専門店商品の課題を解決するものとして提案していく。
5月8日、発表したグローバルカカオ事業本部カカオマーケティング部カカオG長の正直(まさなお)哲郎氏は「今回の新商品を通じて生食感チョコレートという市場を創造していきたい」と意欲をのぞかせる。

全日本菓子協会によると2024年チョコレート市場は小売金額ベースで6312億円と推定。これを、新市場創造により将来的には7000億円へと引き上げていく。
新商品は、カカオマスを主原料としながらも、水分領域がチョコレート(水分3%以下)と生チョコレート(水分10%以上)の間の3~10%内。これまでにない水分領域であるため、チョコレート類の公正競争規約上、チョコレートには該当せず、種類別名称は菓子となる。
ただし同社では実質的にチョコレートと捉えていく。
「固めの食感の商品が多い中で、しっとしりとした柔らかさを楽しむ商品にニーズがあると考えている。菓子ではあるが、チルドの生チョコレートに生食感チョコレートを足したものを当社ではチョコレートの概念で捉えている。両方を伸ばすことでより多くの方に楽しんでいただきたい」と語る。
グローバルカカオ事業本部カカオ開発部カカオGの黒須充春氏も「クッキー市場が柔らかいクッキーの登場によって拡大したように“選べる”ことが大事。それにより喫食機会が増えると考えており、まずは柔らかいという価値を定着させていきたい」と述べる。

洋酒不使用も特徴でターゲットや喫食シーンの広がりも見込む。
ターゲットはミルクチョコレートユーザー。「苦味を抑えられたのも特徴。その上で、ベネズエラ産のカカオ豆を配合してコクを出し、ミルクチョコレート好きな方がおいしいと思えるようなものに仕立てた」と胸を張る。
ベネズエラ産のカカオ豆は製品中5.9%使用。これは製品中に使用しているカカオ豆の半分に相当する。
柔らかな食感と常温保存の両立にあたっては、8年かけて編み出した同社独自の特許製法「生ねり製法」を活用した。
材料を混ぜ合わせる一般的なチョコレートの場合、チョコレートと生チョコレートの中間の水分領域を目指そうとすると、チョコレートと水分(ミルク)が分離してしまい、ボソボソの食感になる。
生ねり製法は、カカオとミルクを混ぜ合わせるのではなく、強い力で練り上げることで分離せず滑らかで柔らかい食感を実現した。
「生ねり製法は文字通り、練るという混ぜ方をしており、油の部分を少し固めた粘土状(半固形状)に水分を入れ込むようなイメージとなる。物凄く強い力で水分を練り込むことで水分を微細に分散させる」と説明する。
生ねり製法は、チョコレート生地を長時間練り上げる作業(精錬・コンチング)とは異なる。「コンチングはチョコレートの香りを良くするための工程」と語る。
スティック形状のソフト生地の成型・包装も困難を極めたという。
「ワンハンドで手にべたつかずに食べられるようにしたいと思ったが、かなり粘性があるため(成型の)型からなかなか抜けないことと包装が技術的課題となった。乳飲料やグミなど社内の知見を積み重ねて課題解決を図った」と振り返る。
市場創造にあたっては、同じく生ねり製法を活用して開発した「明治 ザ・カカオ 琥珀ガナッシュ」も含まれる。
生ねり製法には汎用性があることからフレーバー展開も視野に入れる。
「ミルクを抜いてハイカカオのものもできる。果汁なども、通常の板チョコレートの場合、パウダーにしないと原料として使えないが、液体の原料を使用できる。複合的に何かをサンドするとかビスケットを練り込むことも含めて検討している。今後もいろいろな食感にチャレンジしていきたい」と意欲を示す。
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