2030年に国内酒類売上高1兆円を目指すサントリー。ビール類、RTD、ウイスキー、ワイン、ノンアルと幅広いカテゴリーで多彩なポートフォリオを持つ強みを武器に、持続的な事業成長へ新たなチャレンジを行う。
「サントリーの事業成長にとって、美味追求・品質向上が最も重要な活動。お客様に新たな価値を提供するため、23年からの3年で300億円の成長投資を行っている」。
12月24日の会見で、鳥井信宏社長が語った。副社長を務めるサントリーホールディングスでは、3月から社長に就任する。
ビール大手各社が年初に実施するのが通例の事業方針説明会だが、今回は2月にかけて分散。サントリーは異例の年末に開催した。4月に開幕する大阪・関西万博に向けた取り組みを説明するためだという。
万博では「水と生きる」をテーマに、水上ショーに出展する同社。会場内のレストランでは、温室効果ガス(GHG)排出削減を目指し再生農業原料を使ったビール「水空(すいくう)エール」、CO2削減びんを使用した日本ワインを提供する。
「GHG削減に向けたビールを作ったのは初めて。ただ量を販売するとなると、いろいろな課題が顕在化してくる。万博で発売し、継続的に販売できるかを総合判断する」(常務執行役員ビール本部長 多田寅氏)。
25年の大きな挑戦が、ノンアルの統合戦略だ。これまでビールやRTD、ワインなどに分かれていたノンアル担当組織を、新たに「ノンアル部」として統合する。
「潤滑油としてのお酒は、うるおいを与える存在として大切。ただ健康志向の高まりで需要が減ることへの危惧がある。アルコールが入っていなくても、潤滑油になれればとの思いからノンアル部を立ち上げる」(鳥井氏)。“度数0・00%の酒”との切り口で、拡大するノンアル市場に向けたMDを加速させる。
ビール類では、狭義ビールとエコノミー商品の両輪が軸足。23年発売「サントリー生ビール」は12月からデザインと中味を刷新。定番ブランドとしての地位確立を図り、27年に1000万㌜を目指す。「ザ・プレミアム・モルツ」もデザインを刷新するとともに、新たな品質PRに向けたコミュニケーションを始動する。
新ジャンル「金麦」もリニューアル。限定品として展開した「金麦サワー」は新たに通年品の「金麦 晩酌サワー」として、来年4月から全国発売。日常的に家で飲むのにふさわしいブランドとして地位確立を目指す。