パン粉業界 粉価改定後も据置き主流か 本意は“値上げ”

7月からの粉価改定を受け、小麦粉を主原料とするパン粉業界では価格を据え置くメーカーが主流になるとみられる。今年春の麦価改定により、製粉各社は7月から強力系を30円値下げし、中・薄力系を110円程度値上げすると発表した(各25㎏当たり)。

全国パン粉工業協同組合連合会の小澤幸市理事長(富士パン粉工業社長)はこのほど業界紙向けに開いた会見で「全体的には据置き、中・薄力粉を使うところは個別に対応ということになるのではないか」との考えを示した。

小澤理事長は会員各社にヒアリングした現状について「価格を据え置くという会員が多かったが、それらは本意ではない」とした上で、実際には値上げしたい企業が多く、その要因として「配送やパン粉を乾燥させる際にかかるエネルギー代の高騰を真っ先に上げる声が多かった」と報告した。

人手不足に起因する人件費の高騰も深刻で、「パン粉は自動化が遅れており、こうした状況が今後も続くのではないか」と危機感を示した。

小澤理事長は「今回のような中途半端な改定では、割り算すれば帳消しになる。たとえ1、2円の値上げをお願いしても、それぐらい企業努力でどうにかしろと言われる。原料に近いものを作っている業界ほどコストを認めてもらえず、ウィンウィンになっていない状況がある」と述べた。

また、家庭用については業務用と異なり交渉してから値上げが反映されるまで半年近くの遅れが出ることや、各社の自社ブランドよりもPB商品が増えている現状を説明した。

なお、今年1~3月のパン粉生産量は業務用が前年比0・4%増の3万3千800t、家庭用が同2・8%減の4千100t、合計では前年並み。

同連合会の藤川満専務理事は「生産量はほぼ変わらないが、家庭用は今まで以上に安価な商品が求められている」と指摘した。