食品の営業DXに切り札 複数社のPOSデータを統合・連携し、大幅な省力化と提案の高度化を支援 インテージが新サービス提供開始

食品メーカーの営業DX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に支援する切り札の登場だ。インテージは、このほど新サービス「POS-is」の提供を開始。小売企業ごとにフォーマットが異なる複数のPOSデータをユーザーの管理下で統合し、インテージの市場データや自社が保有する出荷・販売データなどと容易に連携させることができる。本紙の取材に事業開発本部流通ユニットビジネス企画室の今井康善室長は「大幅な省力化と提案営業の高度化を実現する。大手・中小に関わらず顧客のニーズにあわせた支援が可能」などと語った。

開発の背景には、POSデータは市場の実需を表す重要な指標でありながら、営業の商談等に活用し切れていなかった課題がある。その理由は、数百社におよぶ小売企業ごとのフォーマットが異なっており、データの集計や統合に膨大な時間がかかるためだ。またデータの分析能力は個人によってばらつきがある。営業担当者の業務が標準化できていないケースが多いのも実情だ。(表下記事続く)

新サービス「POS-is」イメージ図 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
新サービス「POS-is」イメージ図

これらの課題を解決すべく生まれたのが新サービスの「POS-is」。POSデータのダウンロードから統合、ダッシュボードの作成まで自動で行える優れものだ。異なる業態やチェーンのデータも、全て同じフォーマットで見られるように自動変換され、日別やSKU別での比較も容易に可能。これまでは営業担当者が手動で行うしかなかったデータ集計・統合が自動化されているため、作業時間が大幅に短縮され、生産性の向上にもつながる。「自社で全てシステム構築すると数千万円から数億円の投資が必要かもしれない。当社サービスを利用すれば比較的低コストで営業DXを実現できる」(今井室長)。

営業提案の高度化にも貢献する。インテージが保有する市場データの「SRI+(全国小売店パネル調査)」「SCI(全国消費者パネル調査)」や自社の出荷・販売データとPOSデータを連係させ、データを根拠により深化した提案も行える。例えば日々展開している販促の実績を可視化し、より投資効果の高いプロモーション施策を探ることも可能。

また、市場データとの比較も強みの一つ。今井室長は「小売業1社のPOSデータが前年比105%であれば好調なように見える。しかし、市場全体が前年比120%の伸びを見せているのであれば、その小売業に対して改善策を提案する必要が出てくる」と説明する。(表下記事続く)

カテゴリ・サブカテゴリ別の販売実績比較 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
カテゴリ・サブカテゴリ別の販売実績比較(画像クリックで拡大)

同社はこれまでも食品メーカーらの要望に応じて同様のデータ統合・分析を行い、業務改善に貢献してきた実績がある。しかし、「(既存のシステムでは)POSデータを当社に開示する許可をいただく必要があり、その点がネックになっていた」とし、「新サービスでは、POSデータを活用いただく企業様の中でデータ統合のシステムを構築するため、これまでの契約内容の範囲内で業務を改善できる。ニーズに合わせて、どのデータと統合するかのカスタマイズも自由」(今井室長)。

今後については「業界全体のDX化に貢献するとともに、共通インフラとしての確立も目指していきたい」と意欲をのぞかせる。「市場の実需を表すPOSデータを納品データと組み合わせることで、店舗の在庫量を特定し返品リスクや廃棄リスクを減らすこともできる。将来的に業界全体で課題となっている食品ロス削減などにも活かせれば」と展望する。

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