伊藤園と伊藤園グループのタリーズコーヒージャパンは「TULLY‘S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドのおいしさの背景を改めて伝えてブランド強化を図るべく足並みを揃えた。
伊藤園は主に飲料などの小売商品で、タリーズコーヒージャパンはカフェの運営でそれぞれ「タリーズコーヒー」ブランドを展開している。
コロナ禍の巣ごもり需要により家庭内で求められるコーヒーの品質が高まり、家庭内で飲まれるコーヒーとカフェなど家庭外で飲まれるコーヒーがボーダレス化していることが背景にあるとみられる。
今回、小売商品と店舗運営が歩調を合わせて相乗効果を狙う。
両社が9月14日に開催した「タリーズコーヒー」ブランド方針発表会はその第一歩となる。
飲料について、伊藤園の相澤治マーケティング本部コーヒーブランドグループブランドマネージャーは「(タリーズコーヒージャパンの)バリスタがコーヒー豆の選定や焙煎にまで入り込んで監修し、伊藤園の開発担当としっかりタッグを組んで『タリーズコーヒー』のプロフェッショナルクオリティにこだわっている」と語る。
飲料の旗艦商品「タリーズコーヒーバリスタズ」シリーズでこだわっている焼きたて・挽きたて・淹れたての“3たて”も紹介。
使用する豆は国内で焙煎後2週間以内にバリア性の高い包材で各飲料工場に運ばれ粉砕される。
粉砕後24時間以内にドリップ抽出され、アルミボトル缶への充填では、酸素の流入を防ぐためキャップを巻き占めるに際に窒素ブローを行っている。
タリーズコーヒージャパンの売上高と店舗数は右肩上がりで成長し、コロナ禍の行動制限で一度落ち込んだものの、人流回復とともに拡大傾向にある。
タリーズコーヒージャパンマーケティング本部の工藤和幸氏は「前期(4月期)は34店舗出店し6店舗純増の766店舗となった。今期第1四半期に9店舗出店し順調に店舗数を増やしている。客単価も前期、2020年4月期比で8.7%以上アップした」と説明する。
今期は、アフターコロナに向かう中で変わりゆく生活様式に対応すべく、公共施設・公園・駅・病院への出店やコラボ店など出店戦略を多様化して786店舗への拡大を目指していく。
中長期先の店舗数の拡大を見通して、高品質コーヒー豆の継続的な調達にも取り組む。
その際、「生産者との信頼関係が非常に大事」と指摘するのはタリーズコーヒージャパンプロダクト本部ビーンズ開発グループの南川剛士氏。
新興国や生産国でのコーヒーの消費拡大や地球温暖化による減産で高品質コーヒー豆の確保が世界的に難しくなる中、タリーズコーヒージャパンでは産地により深く入り込んだ取り組みに重きを置く。
その代表的な取り組みの1つが、ペルーで行われている接ぎ木プロジェクト。
ペルーでの接ぎ木とは、ティピカ種(アラビカ原種)が穂木(ほぎ)となり植物体の上部を担い、ロブスタ種が台木(だいぎ)となり植物体の下部を担うもの。
デリケートで味わいが良いとされ絶滅寸前とも言われているティピカ種と病害虫に強いとされるロブスタ種を接ぎ木することで、両者の強みが活かされ、品質がよく丈夫で生産性の良いコーヒー豆が生み出される青写真を描く。
19年に接ぎ木で苗を作成し20年にテストの植樹を実施。26年に初収穫を予定している。
そのほか、ブラジル・バウ農園とパートナーシップを結び、同農園の専用区画に希少品種のレッドブルボンを栽培している。
グァテマラでは小規模生産者を対象に品質コンテストを開催し、コスタリカではドータ農協と小規模生産による最高品質のコーヒーを作り上げるマイクロロットプロジェクトを展開している。
マイクロロットプロジェクトでは、タリーズコーヒージャパンの担当者(フェーロー)が現地でカッピング審査を行い、その評価内容を生産者に伝え、コンテスト入賞者にプレミアムを支払うことで生産者のモチベーション向上を図っている。
10月11日にはタリーズ店舗で「マクロロット・コスタリカ2023ロット」地域限定発売される。少量生産のため、北海道・東北でロットNo.56といった具合に全国7エリア別に異なるロットを数量限定発売していく。
なおタリーズコーヒージャパンでは生産者から直接コーヒー豆を買い付けておらず商社などを介してコーヒー豆を調達している。